【受験数学】位置ベクトルの問題の解き方を徹底解説!!【ベクトル】(例題つき)

今回は大学入試の数学でも頻出分野であるベクトルの問題について、その解き方を解説していきます。

 

図形の問題を解く方法は、大きく分けると

  1. 図形的性質に注目して幾何的に解く
  2. 座標を設定して座標幾何として解く
  3. 位置ベクトルを用いて解く

の3種類に分類されます。

 

このうち1.の幾何的な解法は、ひらめきが必要な場合が多く、他の解法に比べて入試本番では思いつかない可能性が高いです。

ですので、図形の問題については基本的には2.か3.の解法を用いることをお勧めします!

 

2.の解法では座標を設定するので、ひらめきに頼らず機械的に解くことができます。

また、座標がわかっているため成分ベクトルを用いることも多いです。

 

3.の解法についても位置ベクトルの問題として機械的に処理することができますが、2.の解法よりは汎用性の面で劣ります。

しかし、計算自体は2.よりも平易になることも多いので、3.も非常に有効な解法です。

 

今回はこれらの中でも3.の位置ベクトルを用いた解法について詳しく解説していきたいと思います!

 

そのために、まずは例題を挙げておきます。

 

(例題)
 OA=1, OB=\sqrt{2}, OC=2, AB=1, BC=\sqrt{2}, CA=2の四面体 OABCがある。辺 OA 2:1に内分する点を P、辺 OBの中点を Q、辺 OC 1:2に内分する点を Rとし、さらに三角形 ABCの重心を Gとする。
また、 \overrightarrow{OA} = \overrightarrow{a}, \overrightarrow{OB} = \overrightarrow{b}, \overrightarrow{OC} = \overrightarrow{c}と書く。
このとき、次の(1)〜(3)の問いに答えよ。

(1) 直線 OGと、3点 PQRを通る平面との交点を Dとするとき、 \overrightarrow{OD} \overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}を用いて表せ。
(2) 点 Dから平面 ABCに垂線 DHを引くとき、 \overrightarrow{OH} \overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}を用いて表せ。
 

それでは、ここからはベクトルの問題の分類について説明したのち、位置ベクトルの解法の概要について述べ、例題を用いた具体的な解法の解説を行なっていきたいと思います!

 

目次



 

ベクトルの問題の分類

ベクトルの問題は大きく2種類に分類することができます。

その2種類の分け方はなんでしょうか、と問われた場合、「平面ベクトル」と「空間ベクトル」と答える人が多いのではないでしょうか。

確かにこのような分け方も一つの分け方かもしれませんが、受験数学においてはあまりお勧めできません。

ではどのように分けるのかというと、既にお気づきの人もいるかもしれませんが、「位置ベクトル」と「成分ベクトル」という分け方をします!

理由は単純で、この2種類で解法が異なるからです。

逆に言ってしまえば、「平面ベクトル」と「空間ベクトル」の問題では解法に差がないということです!

しかし、多くの参考書やテキストでは「平面ベクトル」と「空間ベクトル」で章分けされており、そのせいでこれらは別物だという印象を持ってしまっている受験生が多いのではないでしょうか。

 

本記事では冒頭でも述べましたし、タイトルにも記載の通り「位置ベクトル」の解説を行なっていきますので、そのイメージを持っておいてください!

 

位置ベクトルの解法の手順

冒頭では、位置ベクトルの解法を用いれば問題を機械的に解くことができると書きました。

なのでここではまず、その機械的に解く手順について説明していきたいと思います。

位置ベクトルの解法の手順は以下の4つのステップになります!

  • Step1) 始点を決める
  • Step2) 基本ベクトルを決める
  • Step3) 問題文の条件を全てベクトルの式として立式する
  • Step4) Step3で立てた条件式の始点をStep1で決めたものに揃え、ベクトルはStep2で決めた基本ベクトルで表す

この4つのステップを順に行いさえすれば、基本的にはあらゆる位置ベクトルの問題を解くことができます!

それではここからは、上の例題を用いて具体的に解説していきます。

 

例題を用いた解説

 (1) 

Step1) 始点を決める

まずは位置ベクトルの始点を決めましょう!

基本的には自由に決めることができますが、多くの場合は点 Aや点 Oなどといった問題の中でも代表的な点を選択します。

この問題でも、点 Oを始点とすることにしましょう!

 

Step2) 基本ベクトルを決める

次に基本ベクトルを決めましょう。基本ベクトルとは、他のベクトルを表すために使う、最も基本となるベクトルだと思ってください。

2次元の場合は2つ、3次元の場合は3つ選びます。

今回は3次元の問題なので、3つ選ぶことになりますが、これも問題文で与えられているように \overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}を用いることにしましょう。

 

Step3) 問題文の条件を全てベクトルの式として立式する

さて、条件を立式していきましょう。この段階では始点や基本ベクトルについて特に意識する必要はありません。

とにかく漏れなく、網羅的に全ての条件を洗い出すことに集中しましょう!

 

まずは(1)、(2)に共通の条件についてです。

四面体 OABCの辺の長さの条件より

 |\overrightarrow{a}| = 1, \quad |\overrightarrow{b}| = \sqrt{2}, \quad  |\overrightarrow{c}| = 2

 \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} = 1,\quad \overrightarrow{b} \cdot \overrightarrow{c} = 2,\quad \overrightarrow{c} \cdot \overrightarrow{a} = \cfrac{1}{2}

となります。

 

また、4点 P, Q, R, Gの条件より

 \overrightarrow{OP} = \cfrac{2}{3}\overrightarrow{a}

 \overrightarrow{OQ} = \cfrac{1}{2}\overrightarrow{b}

 \overrightarrow{OR} = \cfrac{1}{3}\overrightarrow{c}

 \overrightarrow{OG} = \cfrac{1}{3}\biggl( \overrightarrow{a} + \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} \biggr)

と立式できます。

 

次に(1)の問題の条件でを見ていきましょう。

 Dについて、これは直線 OG上の点であり、かつ平面 PQR上の点であるので

 \overrightarrow{OD} = k \overrightarrow{OG}

 \overrightarrow{OD} = s \overrightarrow{OP} + t \overrightarrow{OQ} + (1 - s - t) \overrightarrow{OR}

 

 

となります。

これで、(1)については全ての条件を列挙し、立式することができましたね!

では次のステップに進みましょう。

 

Step4) Step3で立てた条件式の始点をStep1で決めたものに揃え、ベクトルはStep2で決めた基本ベクトルで表す

Step3で立てた式を見ていきましょう。

 \overrightarrow{OP}, \overrightarrow{OQ}, \overrightarrow{OR}, \overrightarrow{OG}については始点が Oに揃っており、ベクトルも基本ベクトルで表されています。

 

 \overrightarrow{OD}については、始点は揃っているものの、基本ベクトルで表されていません。

なので、この式を変形していきましょう!

まずは1つ目の式について、 \overrightarrow{OG}を消去してあげると

 \overrightarrow{OD} = \cfrac{k}{3} \biggl( \overrightarrow{a} + \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} \biggr)

と書くことができます。

次に2つ目の式についても同様に基本ベクトルで表すと

 \overrightarrow{OD} = \cfrac{2s}{3} \overrightarrow{a} + \cfrac{t}{2} \overrightarrow{b} + \cfrac{1 - s - t}{3} \overrightarrow{c}

となります。

これにより、 \overrightarrow{OD}が2通りの式で表すことができたので、辺々を比較すると 

  \cfrac{k}{3} = \cfrac{2s}{3}

  \cfrac{k}{3} = \cfrac{t}{2}

  \cfrac{k}{3} = \cfrac{1 - s - t}{3}

という連立方程式が導き出されます。

これを解くと、 k = \cfrac{6}{13}と求められるので

 \overrightarrow{OD} = \cfrac{2}{13} \biggl( \overrightarrow{a} + \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} \biggr)

と求めることができました!

(* \overrightarrow{OD}を求めるだけであれば kだけ求められれば十分なので、 s tについては計算していません)

 

では次に(2)について解いていきましょう!

(2)

Step1) 始点を決める

Step1は(1)と同様です。

 

Step2) 基本ベクトルを決める

こちらも(1)と同様です。

 

Step3) 問題文の条件を全てベクトルの式として立式する

ここでは新しい(2)での新しい条件について立式していきましょう。

(2)で新しく現れたものといえば点 Hなので、この点に対する条件を列挙していきます。

 Hは平面ABC上の点なので、改めて s, tを用いて

 \overrightarrow{OH} = s \overrightarrow{a} + t \overrightarrow{b} + (1-s-t)\overrightarrow{c}

と書くことができます。

また、 DH \perp (平面ABC)なので

 \overrightarrow{DH} \cdot \overrightarrow{AB} = 0

 \overrightarrow{DH} \cdot \overrightarrow{AC} = 0

と書くことができます!

これで全ての条件を立式することができたので、Step4へと進みましょう!

 

Step4) Step3で立てた条件式の始点をStep1で決めたものに揃え、ベクトルはStep2で決めた基本ベクトルで表す

Step3)で立式した条件式について、始点を Oに揃え、ベクトルは全て基本ベクトルで表していきます!

 

1つ目の \overrightarrow{OH}についての式は既にOKです!

 

2つ目の式について

 (左辺) = \overrightarrow{DH} \cdot \overrightarrow{AB} \\ \quad = \bigl( \overrightarrow{OH} - \overrightarrow{OD} \bigr) \cdot \bigl( \overrightarrow{b} - \overrightarrow{a} \bigr) \\ \quad = \biggl( (s - \frac{2}{13}) \overrightarrow{a} + (t - \frac{2}{13}) \overrightarrow{b}+ (\frac{11}{13} - s - t) \overrightarrow{c}  \biggr) \cdot \biggl( \overrightarrow{b} - \overrightarrow{a} \biggr) \\ \quad = \biggl( (s - \frac{2}{13}) + (t - \frac{2}{13}) \cdot 2 + (\frac{11}{13} - s - t) \cdot 2 \biggr) - \biggl( (s - \frac{2}{13}) + (t - \frac{2}{13}) + (\frac{11}{13} - s - t) \cdot \frac{1}{2} \biggr) \\ \quad = - \cfrac{3}{2} s - \cfrac{1}{2} t + \cfrac{29}{26} = 0 \\ \quad \Leftrightarrow 3 s + t = \cfrac{29}{13}

 

3つ目の式について

 (左辺) = \overrightarrow{DH} \cdot \overrightarrow{AC} \\ \quad = \bigl( \overrightarrow{OH} - \overrightarrow{OD} \bigr) \cdot \bigl( \overrightarrow{c} - \overrightarrow{a} \bigr) \\ \quad = \biggl( (s - \frac{2}{13}) \overrightarrow{a} + (t - \frac{2}{13}) \overrightarrow{b}+ (\frac{11}{13} - s - t) \overrightarrow{c}  \biggr) \cdot \biggl( \overrightarrow{c} - \overrightarrow{a} \biggr) \\ \quad = \biggl( (s - \frac{2}{13}) \cdot \frac{1}{2} + (t - \frac{2}{13}) \cdot 2 + (\frac{11}{13} - s - t) \cdot 4 \biggr) - \biggl( (s - \frac{2}{13}) + (t - \frac{2}{13}) + (\frac{11}{13} - s - t) \cdot \frac{1}{2} \biggr) \\ \quad = - 4 s - \cfrac{5}{2} t + \cfrac{75}{26} = 0 \\ \quad \Leftrightarrow 8 s + 5 t = \cfrac{75}{13}

 

これらを解くと

 s = \cfrac{10}{13}

 t = - \cfrac{1}{13}

となるので、 \overrightarrow{OH}

 \overrightarrow{OH} = \cfrac{10}{13} \overrightarrow{a} - \cfrac{1}{13} \overrightarrow{b} + \cfrac{4}{13} \overrightarrow{c}

と求めることができました!

 

まとめ

  • ベクトルの問題は「位置ベクトル」と「成分ベクトル」で解法が異なる
  • 「位置ベクトル」の解法は4ステップの決まった手順を実行するだけ