【受験数学】立体の体積の求め方を徹底解説!【微分・積分】(例題つき)

 今回は、受験数学の微分積分の分野から立体の体積の求め方について徹底的に解説していきます。

 

立体の体積については、回転体の体積についての公式を覚えているだけで、回転体以外の体積の求め方がわからなかったり、回転体であっても見たことのないような難易度の高い問題になると途端に解けないという受験生は多いのではないでしょうか。

 

しかし実は、立体の体積の問題は回転体やその他に限らず共通の方法で解くことができます。

今回は体積を求める一般的な方法を例題を用いて解説していきます!


目次



 

例題

(例題)
 xyz空間に一辺の長さが 1の正四面体 ABCDがある。4つの頂点の座標はそれぞれ
 A\biggl(-\cfrac{1}{2}, 0, 0 \biggr), \quad B\biggl(\cfrac{1}{2}, 0, 0 \biggr), \quad C\biggl(0, \cfrac{\sqrt{3}}{2}, 0 \biggr), \quad D\biggl(0, \cfrac{\sqrt{3}}{6}, \cfrac{\sqrt{6}}{3} \biggr) 
である。
このとき、正四面体 ABCD z軸の周りに一回転させてできる立体の体積を求めよ。
 
この例題では各頂点の座標を問題文で与えていますが、入試問題ではこれらも自分で求めなければならないことが多いです。
*これらを求めるためには、座標幾何やベクトルを用いることがほとんどですが、今回はあくまで体積を求める方法に絞って解説するため問題文中に座標を与えました。
この部分についてはまた別の機会に記事を書きたいと思います!)
 

 

立体の体積の求め方

立体の体積を求める方法は以下の4ステップで手順化することができます!

 

(立体の体積の求め方)
  1. 積分を行う軸を決める
  2. 上記の軸に垂直な平面での立体の断面を考える
  3. 上記の断面の面積を求める
  4. 断面積を積分して立体の体積を求める
 
体積を求める方法は、実はこの4ステップだけです。
ここからは上で書いた例題を用いて、それぞれのステップについて具体的な計算方法を解説していきます。 
 

例題を用いた解説

 
それではStep1から手順を追っていきましょう!
 

Step1) 積分を行う軸を決める

 
このステップでは積分を行う軸を決めましょう。
ほとんどの場合は x軸、y軸、z軸のいずれかの軸で計算することになりますが、難易度の高い問題ではその他の軸を選ぶこともあります(例えば斜軸回転など)
 
また、この段階で選んだ軸によって、後続の計算量が変わってくるので慎重に選びましょう!
 
今回は z軸回転の問題なので、 zを選んでおけば問題ありません!
 

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これでStep1は完了です。
次のステップに進みましょう!
 

Step2) 軸に垂直な平面での断面を考える

このステップでは軸に垂直な平面で、立体を切ったときの断面について考えていきます。
今回、軸は z軸を選んだので z軸に垂直な平面 z = tでの断面を考えましょう。
回転させた後の立体の断面を最初から考えるのは難しいので、まずは回転させる前の断面から考えていくのがセオリーです。
 
正四面体を、平面 z = tで切った断面は下図のような三角形になります。
 

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ではまず、四面体の各辺と平面 z = tの交点の座標を求めていきましょう!

 

交点の座標を求めるには、図形的な性質に注目しても良いですが、座標幾何やベクトルを用いることが多いです。

ここではベクトルを用いて求めていきましょう。

 

例えば辺 ADと平面 z = tの交点を A'とし、 \overrightarrow{AA'} = k \overrightarrow{AD}としましょう。

そうするとまず、 \overrightarrow{AD} = \biggl( \cfrac{1}{2}, \cfrac{\sqrt{3}}{6}, \cfrac{\sqrt{6}}{3} \biggr)なので、 \overrightarrow{AA'} = \biggl(\cfrac{k}{2}, \cfrac{\sqrt{3}}{6} k, \cfrac{\sqrt{6}}{3}k \biggr)です。

従って \overrightarrow{OA'} = \overrightarrow{OA} + \overrightarrow{AA'}なので、 \overrightarrow{OA'} = \biggl(\cfrac{k - 1}{2}, \cfrac{\sqrt{3}}{6} k, \cfrac{\sqrt{6}}{3}k \biggr)となります。

このとき、 A'は辺 ADと平面 z = tとの交点なので当然  z座標は  tです。

つまり、上で求めた \overrightarrow{OA'} z成分に注目して \cfrac{\sqrt{6}}{3} k = tとすることができます。

これを用いて全ての座標を tで表すと、

 A' \biggl( \cfrac{\sqrt{6}}{4} t - \cfrac{1}{2}, \,\, \cfrac{\sqrt{2}}{4} t, \,\, t \biggr)

となります。

 

同様にして他の交点の座標( B', \,\, C'とする)も求めると

 B' \biggl( -\cfrac{\sqrt{6}}{4} t + \cfrac{1}{2}, \,\, \cfrac{\sqrt{2}}{4} t, \,\, t \biggr)

 C' \biggl( 0, \,\, \cfrac{\sqrt{3} - \sqrt{2} t }{2}, \,\, t \biggr)

と求まります。

 

これにより三角形 A'B'C'の平面図を描くと下図のようになります。

 

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これより、回転体の断面はドーナツ状になっていることがわかりました!

次のステップで、この断面の面積を求めていきましょう!

 

 Step3) 断面積を求める

Step2の考察により、断面の形状はドーナツ状であることがわかりました。
ドーナツ状の領域の面積は外側の円の面積から内側の円の面積を引くことで求めます。
それぞれ円の面積を求める必要があるので、まずは半径 R, rを求めておきましょう。
 
 R C'y座標に一致するので、

 R = \cfrac{\sqrt{3} - \sqrt{2} t }{2}

です。

 

また、 r A'やB' y座標に等しいので

 r = \cfrac{\sqrt{2}}{4} t

です。

 

従って、この断面の面積 S(t)

 S(t) = \pi R^2 - \pi r^2 \\ \quad \quad = \pi \biggl( \cfrac{3}{8} t^2 - \cfrac{\sqrt{6}}{2} t + \cfrac{3}{4} \biggr)

と求めることができます!

 

これで断面積を求めることができたので最後のステップに進みましょう。

 

Step4) 断面積を積分して体積を求める

さて、あとは積分を実行して、体積を計算するだけです。

積分の式は

 V = \int_{0}^{\frac{\sqrt{6}}{3}} {S(t)} dt

です。

積分区間について、少し補足説明をしておきます。

積分区間は体積を求めたい立体が存在している範囲にすることになります。

今回は z軸に垂直な平面 z = tが、立体と交点を持つ範囲を考えれば良いことになりますが、元の四面体が z軸方向で考えると 0 \leqq z \leqq \cfrac{\sqrt{6}}{3}の範囲に存在していることから、この範囲を積分区間とすれば良いのです。

 

さて、積分の式を立式することができました。

被積分関数も今回はただの二次関数なので積分計算も悩むことなく進めることができると思います。

では計算していきましょう。

 V = \int_{0}^{\frac{\sqrt{6}}{3}} {S(t)} dt \\ \quad = \int_{0}^{\frac{\sqrt{6}}{3}} {\pi \biggl( \cfrac{3}{8}t^2 - \cfrac{\sqrt{6}}{2} t + \cfrac{3}{4} \biggr)} dt \\ \quad = \left[ \pi \biggl( \cfrac{1}{8}t^3 - \cfrac{\sqrt{6}}{4}t^2 + \cfrac{3}{4} t \biggr)  \right]_{0}^{\frac{\sqrt{6}}{3}} \\ \quad = \cfrac{\sqrt{6}}{9} \pi

 

これで体積を求めることができました!

 

まとめ

立体の体積は回転体であろうと、それ以外であろうと今回解説した方法で求めることができます。

 

Step1で少し述べたように、積分を行う軸の選択によってその後の計算量に大きなさが出てくるので、軸の選ぶときは注意が必要です。 

 

 

 

 

【受験数学】領域の解法を徹底解説!【包絡線】【軌跡と領域】(例題つき)

前回、前々回はそれぞれ逆像法、順像法による解法を解説しましたが、今回はその続きとして、包絡線による解法を解説していきます。

 

順像法による解法や、領域の解法全般についての説明、特徴などについては前回書いたコチラの記事をご覧ください!

【受験数学】領域の解法を徹底解説!【順像法】【軌跡と領域】(例題つき) - hmorinari’s diary

 

 順像法による解法や、領域の解法全般についての説明、特徴などについては前回書いたコチラの記事をご覧ください!

【受験数学】領域の解法を徹底解説!【逆像法】【軌跡と領域】(例題つき) - hmorinari’s diary

 

軌跡の解法については以前に解説しコチラの記事をご覧ください!!

【受験数学】軌跡の問題の解き方を徹底解説!!【軌跡と領域】(例題つき) - hmorinari’s diary

 

今回は次のような例題を用いて考えていきましょう。

 

(例題)
実数 t t \gt 0の範囲で変化するとき、2点 A \biggl( 0, \cfrac{\sqrt{t}}{2} \biggr), \quad B \biggl( 2t, \cfrac{3}{2} \sqrt{t} \biggr)を結ぶ直線の通過領域を求めよ。

包絡線の解法

包絡線による解法の手順は以下の4ステップで書くことができます。

 

(包絡線による解法の手順)
  1. 通過領域を求めたい直線あるいは線分の方程式を求める
  2. 直線が接している曲線(これを包絡線と呼ぶ)と曲線との接点を求める
  3. 直線の動きを想像して領域を図示する
 
包絡線の解法は、他の2つの解法に比べてイメージしやすい解法だと思います。
それではここからは例題を用いて具体的にみていきましょう!
 

例題を用いた解説

 
それではStep1から手順を追っていきましょう!
 

Step1) 通過領域を求めたい直線の方程式を求める

今回は2点 A、Bを結ぶ直線の通過領域を求めたいので、この直線の方程式を求めていきましょう。
 
まず、直線ABの傾きは
 (傾き) = \cfrac{\cfrac{3}{2}\sqrt{t} - \cfrac{1}{2} \sqrt{t}}{2t - 0} \\ \quad \quad \quad = \cfrac{1}{2 \sqrt{t}}
 
と求められます。
また、この直線は当然点Aを通るので、直線ABの方程式は
 直線 : y = \cfrac{1}{2 \sqrt{t}} (x - 0) + \cfrac{\sqrt{t}}{2} \\ \quad \quad \quad = \cfrac{1}{2\sqrt{t}} x + \cfrac{\sqrt{t}}{2}
 
となります。
これでStep1はOKです!次のステップに進みましょう!
 

Step2) 直線が接する曲線と接点を求める 

Step1で求めた直線が接する曲線、つまり包絡線を求めていきましょう。

包絡線を求めるためには、直線ABをパラメータ tについて微分し、元の直線の方程式から tを消去すれば良いです。

これは事実として暗記してしまいましょう!

 

直線の式の両辺を t微分すると

 0 = - \cfrac{1}{4 t \sqrt{t}} x + \cfrac{1}{4 \sqrt{t}} \\ \Leftrightarrow t = x

となるので、これを直線ABの式に代入して tを消去すると

 y = \sqrt{x}

と、包絡線にを求めることができました!

 

また、接点についても計算すると (t, \sqrt{t})と求めることができます。

 

Step3) 直線の動きを想像して領域を図示する

Step2により直線ABは、曲線 y = \sqrt{x}の接線であり、接点の x座標 tは、 t \gt 0なので、この直線は下図のように動いていくことが想像できますね。
 

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このことから領域を図示すると下図のようになります。

(ただし境界は y軸の y \leqq 0を含まず、その他は含む)

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まとめ

いかがでしたか?

順像法、逆像法に続き包絡線を用いた解説についても説明してきましたが、包絡線による解法はかなりイメージがしやすく、計算量も少ないかったと感じたのではないでしょうか。

実際、包絡線による解法を適用できる場合は非常に有効な解法ですので是非ともマスターしておきたい解法と言えます!

 

 

 

 

【受験数学】領域の解法を徹底解説!【逆像法】【軌跡と領域】(例題つき)

前回は順像法による解法を解説しましたが、今回は前回の続きとして、逆像法による解法を解説していきます。

 

順像法による解法や、領域の解法全般についての説明、特徴などについては前回書いたコチラの記事をご覧ください!

hmorinari.hatenablog.com

 

軌跡の解法については以前に解説しコチラの記事をご覧ください!!

hmorinari.hatenablog.com

 

今回も前回と同様の例題で考えていきましょう。

 

(例題)
ある直線  l : y = ax - 2a^2 + 1がある。
 a a \geqq 0の範囲で任意に変化するとき、 l a \leqq x \leqq 4aの部分の通過領域を求め、図示せよ。 

逆像法の解法

逆像法による解法の手順は以下の4ステップで書くことができます。

 

(逆像法による解法の手順)
  1. 通過領域を求めたい点を (X, Y)とおく
  2. 条件式を立式する
  3.  X, Yを定数とみなし、その他の文字についての存在条件を求める
  4. 存在条件により求めた領域を図示する
 
どうでしょうか。こちらも順像法と同じく意外と単純な手順ですね!
それではここからは例題を用いて具体的にみていきましょう!
 

例題を用いた解説

 
それではStep1から手順を追っていきましょう!
 

Step1) 領域を求めたい点の座標を文字でおく

今回は直線の(正確には範囲が付いているので線分ですが)の通過領域を求めたいので、直線上の点の座標を設定しておきましょう!
つまり直線上の点をPとし
 P(X, Y)
としておきます。
これでStep1は完了です。
次のステップに進みましょう!
 

Step2) 条件式を立式する

このステップでは条件式を立式していきます。

まず先ほど設定した点Pは、直線上の点なので

 Y = aX - 2a^2 + 1 \\ a \leqq X \leqq 4a \\ a \geqq 0

と書くことができます!

この例題では、他には特に条件がないのでこれで立式も完了です!

次のステップへと進みましょう! 
 

 Step3) XおよびYを定数とみなし、その他の文字の存在条件を求める

順像法と明らかに内容が異なるのはこのステップだけです!

“存在条件”というなんとも難しそうな言葉が出てきましたが、焦らなくて大丈夫です!

これはそのまま、“存在するための条件”だと思えば良いです。

例えば二次方程式において実数解が“存在するための条件”は「判別式が 0以上となる」ことでしたが、これがすなわち存在条件です!

 

では本問題における存在条件とはどうなるかを考えていきましょう!

そのためにはまず、何が変数で何が定数かをきちんと区別するところから始めましょう!

(これは順像法の時にも説明しましたが、領域の問題を解く上で最も重要なことです!

 
逆像法では X, Yの両方を定数とみなします。
そして残った文字を変数と見て、その文字についての存在条件を求めます。
本例題では、残った文字は aになるので、この文字のみ変数とみなし、 aについての存在条件を考えることになります。
 
それではまずはStep3で求めた式を、 aだけが変数のように見えるように変形しておきましょう。
そうすると
 2a^2 - Xa + Y - 1 = 0 \\ \frac{X}{4} \leqq a \leqq X \\ a \geqq 0
 
と書くことができます。
 aについての方程式は二次方程式なので、存在条件は判別式か!と思うかもしれませんが、少し待ってください!
よく見ると下に aの範囲を制限する不等式がありますね!
なのでこれは単純に判別式を用いて存在条件を求めることはできず、二次方程式の解配置問題として解く必要があります。
解配置問題として解くので、左辺を aの関数として f(a)と書きましょう。
すなわち
 f(a) = 2a^2 - Xa + Y - 1 \\ \quad = 2 \biggl( a - \cfrac{X}{4} \biggr)^2 - \cfrac{X^2}{8} + Y - 1
 
とおくことになります。
これが、 a軸と (0 \leqq ) \cfrac{X}{4} \leqq a \leqq Xの範囲で少なくとも1つの共有点を持つのは、下図のようなときです。

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従って、求める条件は次の2つです!
 f(X) \geqq 0
 f\biggl(\cfrac{X}{4} \biggr) \leqq 0
 
 1つ目の条件を変形すると
 f(X) = X^2 + Y - 1 \geqq 0\\ \quad \Leftrightarrow Y \geqq -X^2 + 1
となります。
 
さらに2つ目の条件については
 f\biggl(\cfrac{X}{4}\biggr) = -\cfrac{X^2}{8} + Y - 1 \leqq 0\\ \quad \Leftrightarrow Y \leqq \cfrac{X^2}{8} + 1
 
さて、これで存在条件が求まりました。
ここまでの議論は全て X \geqq 0の条件の下で行なっていたことを忘れずに次のステップへ進みましょう。
 

Step4) 存在条件により求めた領域を図示する

さて、Step3で求めた存在条件が、すなわち求めたい領域の式になっているので、あとはこれを図示するだけです。

すると下図のようになります!(ただし、境界を含む)

 

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まとめ

いかがでしたか?

順像法に続いて逆像法をについても説明してきましたが、中身は結構共通となる部分も多かったので、前回の記事を読んでくださった方にとっては理解しやすかったのではないでしょうか。

  

また、いずれは包絡線についての解説も行う予定ですので、お楽しみに!

 

 

【受験数学】領域の解法を徹底解説!【順像法】【軌跡と領域】(例題つき)

今回は軌跡と領域の分野から、領域についての解説をしていきます。

 

領域は軌跡同様、教科書レベルの問題は解けるが、入試問題のような難易度の高い問題になると途端に解けなくなるという人が多いのではないでしょうか。

このような人は、教科書レベルの問題と入試問題とでは必要な知識や解き方が違うと思うかもしれません。

しかし、実は教科書レベルの簡単な問題も、入試に出題されるような難易度の高い問題も、基本となる考え方や解き方は同じです!

 

そこで今回は領域の分野に焦点を当て、その主な解法を紹介していきます!

そしてその後、主な解法の中でも“順像法”(ファクシミリの原理と呼ばれることもあります)について取り上げ、より詳細に解説していきたいと思います!

 

軌跡の解法については以前に解説した記事があるので、そちらも興味があればぜひご覧ください!!

hmorinari.hatenablog.com

 

それでは領域の解法について解説していく前に、まずは例題をあげておきます。

 

(例題)
ある直線  l : y = ax - 2a^2 + 1がある。
 a a \geqq 0の範囲で任意に変化するとき、 l a \leqq x \leqq 4aの部分の通過領域を求め、図示せよ。 

領域の問題に対する主な解法

まずは領域の問題を解く際に用いる主な解法を紹介しておきます。
主な解法は以下に挙げる3種類です!

領域の問題を解く際は、まずは上記3つのうち、どの解法を用いるのかを決めるところから始めましょう!

とはいえ今はまだ上の3つが何が何だかわからない、という人もいると思うので、それぞれの概要を説明していきます!

 

それぞれの解法の特徴

順像法(ファクシミリの原理)の特徴

この解法は比較的イメージしやすい解法だと思います。

それほど計算量も多くなく、比較的様々な問題を解くことができるのが特徴です。

多くの受験生にとっては、まずはこの解法を抑えることをお勧めします!

ある xを固定したときの yの範囲を求め、それを全ての xについて適用する方法です。

この考え方がFAXの原理に似ているので、ファクシミリの原理と呼ばれることもあります。

(とはいえ、今ではFAXと言ってもあまり伝わらないかもしれませんが)

今回はこの解法について詳しく解説します!

 

逆像法の特徴

この解法は領域を厳密に扱う方法です。

そのため理解するのは少し難しいかもしれません。

さらに計算量が多少増える傾向にあります。しかしその分原理的には全ての問題に適用することができる優れた解法でもあります!

国公立や難関私立など、難易度の高い大学を受験する人は必ず知っておくべき解法でしょう!

この解法はまた次回以降にどこかで解説します!

[追記]

逆像法に関する解説記事も書きましたので、本記事末尾のリンクよりこちらも併せてご覧ください!

 

包絡線の特徴

この解法は非常に直感的な解法であり、領域をイメージしやすいので、受験生にとっては最も親しみやすい解法かもしれません。

しかし適用できる問題が直線の通過領域の問題の中でも一部の問題と、かなり限られているため、この解法だけを知っているという状態は危険です。

計算量も少なく簡潔な解法なので、知っておくに越したことはありませんが、少なくとも順像法の解法をマスターしてから学ぶことをお勧めします。

 

3つの解法の特徴まとめ

それぞれの解法の特徴は上で書いた通りです。

それでは結局どの順番に勉強すればいいんだと思うかもしれません。

そしてどのように解法を選べばいいんだとも思うかもしれません。

学習の順番については志望している大学の難易度別に個人的なおすすめを書いておきます。

解法の選び方は共通して書いておきます。

 

<学習の順序>

・国公立や難関私立を志望している人

逆像法→包絡線→順像法

 

・一般的な大学や私立医学部を志望している人

順像法→包絡線→逆像法

 

<解法の選び方>

直線の通過領域か?

 →(yes) 包絡線を試す

  →(解けない) 順像法 or 逆像法を試す

 

 →(no) 順像法 or 逆像法を試す

 

(*順像法 or 逆像法と書いた部分は、どちらか知っている解法を試してください。

  両方ともマスターしているという人は、自分の得意な方を試してください。)

 

学習の順序として上記のように書いた理由を書いておきます。

一般的に難易度の高い問題は逆像法を用いて解くことが多いです。そして逆像法をマスターしていれば、極端な話、順像法については知らなくても問題を解くことができます。

従って順像法の勉強をするよりも、逆像法とはかなり毛色の違う解き方である包絡線を勉強すべきでしょう。

 

逆にそれほど難易度の高くない問題であれば順像法で解けることが多いです。

私立医学部もこの部類に入ると書いたのは、私立医学部では大学事態の難易度(つまり偏差値)が高くとも問題の難易度としては簡単なものが出題される大学が多いため、こちらにいれました。

(*慶応医学部といった一部大学については当然上の難関私立に分類されると考えてください)

 

 それでは前置きが長くなりましたが、ここから順像法(ファクシミリの原理)について詳しく解説していきます!

 

順像法(ファクシミリの原理)の解法

順像法による解法の手順は以下の4ステップで書くことができます。

 

(順像法による解法の手順)
  1. 通過領域を求めたい点を (X, Y)とおく
  2. 条件式を立てて、 Yについて解く
  3.  Xを定数とみなし、その他の文字について Yの範囲を求める
  4. 再度 Xを変数とみなし、領域を図示する
 
どうでしょうか。意外と単純な手順だと思いませんか?
特にStep1なんて座標を文字で設定しているだけで、ほとんど何もしていないに等しいですよね。
それではここからは冒頭の例題を用いて具体的にみていきましょう!
 

例題を用いた解説

かなり間が空いてしまったので、例題を再掲しておきます。 

(例題)
ある直線  l : y = ax - 2a^2 + 1がある。
 a a \geqq 0の範囲で任意に変化するとき、 l a \leqq x \leqq 4aの部分の通過領域を求め、図示せよ。 
 
それではStep1から手順を追っていきましょう!
 

Step1) 領域を求めたい点の座標を文字でおく

今回は直線の(正確には範囲が付いているので線分ですが)の通過領域を求めたいので、直線上の点の座標を設定しておきましょう!
つまり直線上の点をPとし
 P(X, Y)
としておきます。
これでStep1は完了です。
次のステップに進みましょう!
 

Step2) 条件式を立てて、Yについて解く

このステップでは条件式を立てていきます。

まず先ほど設定した点Pは、直線上の点なので

 Y = aX - 2a^2 + 1 \\ a \leqq X \leqq 4a \\ a \geqq 0

と書くことができます!

この他には特に条件がありませんので、 Yについて解けば良いですが、この形で既に解けていますね!

(* Yについて解く、とは Y = (何かしらの式)として表現するということです)

 
それではこのステップも完了です!次のステップへと進みましょう! 
 

 Step3) Xを定数とみなし、Yの範囲を求める

いよいよ領域を求める核となるステップです。

 Xを定数とみなして Yの範囲を求めるのですが、受験においては“範囲”と言われれば“最大値・最小値”だと思えばOKです。

つまり、 Xを定数とみなして Yの最大値・最小値を求めれば良いということになりますが、変数はなんでしょうか?

残った文字が変数となるので aですね!

ここが領域の重要なところです!何を変数として扱い、何を定数とみなすのか、というところに注意して考えましょう!

 

ではまずは Xが定数で aが変数だと見えるように、もう少し上Step2で求めた条件式を変形しておきましょう。

そうすると

 Y = - 2a^2 + Xa + 1 \\ 0 \leqq \frac{X}{4} \leqq a \leqq X

と書くことができますね!

 
つまり Y aの二次関数だとわかったので、平方完成しておきましょう。
 
 Y = - 2 \biggl( a -\cfrac{X}{4} \biggr)^2 + \cfrac{X^2}{8} + 1
 
そしてこの二次関数の (0 \leqq) \frac{X}{4} \leqq a \leqq Xにおける最大値・最小値を求めれば良いですが、これはそれぞれ
 最大値 : Y = \cfrac{X^2}{8} + 1 \quad \biggl( a = \cfrac{X}{4}のとき \biggr)
 最小値 : Y = - X^2 + 1 \quad \biggl( a = Xのとき \biggr) 
 
 と求められるはずです!
(上に凸の放物線なので、軸の位置と範囲に注目すれば良いですね)

 

従ってこれを“範囲”として表現すると

 
 - X^2 + 1 \leqq Y \leqq \cfrac{X^2}{8} + 1  
となります。
ここで、常に X \geqq 0であることには注意しておきましょう。
 

Step4) 再度Xを変数とみて、領域を図示する

さて、Step3で求まった式において、再度 Xを変数と見て、あとは領域を図示するだけです。

これを図示すると下図のようになりますね!(ただし、境界を含む)

 

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まとめ

いかがでしたか?

この記事を読んで順像法を用いて領域を解く方法が理解してもらえれば嬉しい限りです。

少し理解できたと思えた方はどんどん練習問題い取り組みましょう!

 

 

 

また、次回は逆像法を用いた解法の解説を行う予定ですので、そちらもぜひご覧ください!

逆像法についての解説も書きましたので、コチラよりご覧ください!

 

hmorinari.hatenablog.com

 

 

【センターで確率漸化式!?】2019年センター試験の数学、確率の問題を徹底解説!!【確率】【受験数学】

今回は2019年のセンター試験の中から、数学1Aの確率の問題をピックアップして解説していきたいと思います!

 

なにやら「センター試験の確率で確率漸化式が出題され、極めて難化した」という噂を聞いたので、この問題を丁寧に解説していきたいと思います!

 

まずはここに問題を書いておきます。

 

<2019年 センター試験 数学1A 確率>
 赤い袋には赤球2個と白球1個が入っており、白い袋には赤球1個と白球1個が入っている。
 最初に、さいころ1個を投げて、3の倍数の目が出たら白い袋を選び、それ以外の目が出たら赤い袋を選び、選んだ袋から球を1個取り出して、球の色を確認してその袋に戻す。
ここまでの操作を1回目の操作とする。2回目と3回目の操作では、直前に取り出した球の色と同じ色の袋から球を1個取り出して、球の色を確認してその袋に戻す。

(1)  1回目の操作で赤い袋が選ばれ、赤球が取り出される確率は \cfrac{(ア)}{(イ)} \quad であり、白い袋が選ばれ赤球が取り出される確率は \cfrac{(ウ)}{(エ)} \quad である。
(2)  2回目の操作が白い袋で行われる確率は \cfrac{(オ)}{(カキ)} \quad である。
(3)  1回目の操作で白球を取り出す確率を p で表すと、2回目の操作で白球が取り出される確率は \cfrac{(ク)}{(ケ)} \quad p + \cfrac{1}{3} \quad と表される。
 よって、2回目の操作で白球が取り出される確率は \cfrac{(コサ)}{(シスセ)} \quad である。
 同様に考えると、3回目の操作で白球が取り出される確率は \cfrac{(ソタチ)}{(ツテト)} \quad である。
(4)  2回目の操作で取り出した球が白球であったとき、その球を取り出した袋の色が白である条件付き確率は \cfrac{(ナニ)}{(ヌネ)} \quad である。
 また、3回目の操作で取り出した球が白球であったとき、初めて白球が取り出されたのが3回目の操作である条件付き確率は \cfrac{(ノハ)}{(ヒフヘ)} \quad である。

 

目次



 

確率漸化式の問題なのか!?

さて、まずは問題の解説に入る前に、この問題が本当に確率漸化式の問題なのかということについて考えておきます。

結論から言うと「確率漸化式の問題ではない」です。 

というのも、そもそも漸化式というのは数列の分野で初めて登場するものであり、これは高校数学では数学Bに位置付けられているはずです。

すなわちそれよりも手前の数学1Aで漸化式が出題されるはずがないのです。

また、この問題の解説を読めばわかると思いますが、解答において漸化式を解くどころか、漸化式を立式することもありません。

この2つの事実から、確率漸化式の問題とは言えないでしょう。

 

ではなぜ確率漸化式の問題だと言われているかというと、問題を解くに当たっての考え方が確率漸化式の考え方に似ているからだと思われます。

とは言えもちろん確率漸化式の考え方を知らなければ解けないかというとそんなことはなく、きちんと誘導に乗って計算していけばそれほど難しい問題ではありません。

(多少計算が面倒ですが。。。)

 

それではここから具体的な解説に入っていきましょう!

問題の誘導を意識してみてください!

 

解答・解説

まずは状況を図で表しておきましょう。

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(1)の解説

まず(1)は一般的な確率の問題ですね!

1回目の操作で赤い袋が選ばれて、赤球が取り出されるのは、さいころの目が1, 2, 4, 5のいずれかであり、赤い袋に入っている3個の球の中から2個の赤球のどちらかを取り出す確率なので

 \cfrac{4}{6} \cdot \cfrac{2}{3} = \cfrac{4}{9}

となります。

 

次に、白い袋が選ばれて、赤球が取り出されるのは、さいころの目が3, 6のいずれかであり、白い袋に入っている2個の球の中から赤球を取り出す確率なので

 \cfrac{2}{6} \cdot \cfrac{1}{2} = \cfrac{1}{6}

となります。

 

(1)は特に悩まずに解きたいところですね! 

 

(2)の解説

ここからは常に誘導を疑いましょう!

つまり、これより前の問題が関係していないかということを考えるということです!

(2)は、2回目の操作が白い袋で行われる確率であり、これはつまり1回目の操作で白球を取り出す確率です。

これは(1)の余事象であるということに気づけるといいですね!

つまり求める確率は

 1 - \bigl( \cfrac{4}{9} + \cfrac{1}{6} \bigr) = \cfrac{7}{18}

と計算できます!

 

ちなみにこの問題を(1)の結果を用いずに解く場合は、2回目の操作が白い袋で行われるのが、1回目の操作で白球を取り出すときであることから(1)と同様の場合分けを行なって

 \cfrac{4}{6} \cdot \cfrac{1}{3} + \cfrac{2}{6} \cdot \cfrac{1}{2} = \cfrac{7}{18}

と計算することもできます。

この問題に関しては誘導に乗らなくてもそれほど大変ではないですね。

 

(3)の解説

この問題からは誘導に従っていきましょう。

(3)では(2)までの考え方を参考にして解きます。

 

2回目の操作で白球が取り出されるのは

(i)「1回目の操作で白球が取り出され、かつ2回目の操作で白球が取り出される」 

or

(ii)「1回目の操作で赤球が取り出され、かつ2回目の操作で白球が取り出される」 

のいずれかですね!

(i)の確率は p \cdot \cfrac{1}{2}です!

(ii)の確率は (1 - p) \cdot \cfrac{1}{3}です!

よってこれらを足し合わせて、2回目の操作で白球が取り出される確率は

 p \cdot \cfrac{1}{2} + (1 - p) \cdot \cfrac{1}{3} = \cfrac{1}{6} p + \cfrac{1}{3}

と表されることになりますね!

 

これを用いて、2回目の操作で白球が取り出される確率を計算しますが、(2)より p = \cfrac{7}{18}なので

 \cfrac{1}{6} \cdot \cfrac{7}{18} + \cfrac{1}{6} = \cfrac{43}{108}

と求めることができます!

 

また、同様に考えると、3回目の操作で白球が取り出される確率は、2回目の操作で白球を取り出す確率を改めて pとすることで、同様の式で表されるため、結局

 \cfrac{1}{6} \cdot \cfrac{43}{108} + \cfrac{1}{3} = \cfrac{259}{648}

と計算することができますね!

 

この辺りの考え方は確かに確率漸化式の考え方に似ていますが、きちんと誘導に従うことで問題なく解くことができるはずです!

 

(4)の解説

(4) は条件付き確率の問題ですね。

前半の問題から見ていきましょう!

 

前半の問題では2回目の操作で取り出した球が白球であった (= A)」条件の下で「その袋が白い袋である (= B)」確率を求めればよいです。

条件付き確率の公式を使うために、 P(A)および P(A \cap B)をそれぞれ求めていきましょう!

(3)の結果より

 P(A) = \cfrac{43}{108}

であることがわかります。

また、 P(A \cap B)について、これは1回目に白球を取り出して、2回目も白球を取り出す確率なので、(2)の結果より

 P(A \cap B) = \cfrac{7}{18} \cdot \cfrac{1}{2}

と計算できます!

従って、求める条件付き確率は

 P_A(B) = \cfrac{P(A \cap B)}{P(A)} \\ \quad \quad  = \cfrac{\cfrac{7}{18} \cdot \cfrac{1}{2}}{\cfrac{43}{108}} \\ \quad \quad =  \cfrac{21}{43}

です!

 

後半の問題について、前半と同じように条件を分解しましょう!

そうすると、「3回目の操作で取り出した球が白球であった (= A)」条件の下で「3回目で初めて白球を取り出す (= B)確率を求めればよいことになります。

 P(A)については(3)の結果より

 P(A) = \cfrac{259}{648}

であり、 P(A \cap B)については取り出す球の色が「赤→赤→白」であれば良いので

 P(A \cap B) = \cfrac{11}{18} \cdot \cfrac{2}{3} \cdot \cfrac{1}{3}

です。

従って、求める条件付き確率は

 P_A(B) = \cfrac{P(A \cap B)}{P(A)} \\ \quad \quad  = \cfrac{\cfrac{11}{18} \cdot \cfrac{2}{3} \cdot \cfrac{1}{3}}{\cfrac{259}{648}} \\ \quad \quad =  \cfrac{88}{259}

です!

 

いかがでしたか?

確率漸化式についてはコチラでも詳しく解説しています!

hmorinari.hatenablog.com

coconala.com

 

 

くじ引きの確率についてはコチラで詳しく解説しています!

hmorinari.hatenablog.com

coconala.com

 

 

条件付き確率 についてはコチラ!

hmorinari.hatenablog.com

 

【受験数学】条件付き確率の公式とイメージを徹底解説!!【確率】(例題つき)

今回は確率の中でも「条件付き確率」について解説します。

条件付き確率は、通常の確率とは少し考え方が違いますが、公式を覚えてさえいれば答えを求めることはそれほど難しくありません。

そのため「とりあえず公式を覚えているから計算はできるけど実は意味はよくわかっていない」「多少複雑な問題になると途端に解くことができない」という受験生は意外と多いのではないでしょうか。

 

ということで、今回は条件付き確率について、公式からイメージまで解説していきたいと思います!

この記事を読み終える頃には「なるほど!条件付き確率ってそういうことだったんだ!」と思えるくらい理解が深まっているはずです!

 

目次



 

条件付き確率の公式

まずは基本事項として、条件付き確率の公式を書いておきます。

 

<条件付き確率の公式>
ある事象 Aが生じたという条件の下で、事象 Bが生じる確率 P_A(B)

 P_A(B) = \cfrac{P(A \cap B)}{P(A)}

と表される。
 
この公式について少し解説を加えておきます。
まずは下図のようなベン図を考えます。

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以降、各集合に含まれる要素の数を n(\bigcirc)と書きます。
 
通常の確率では、ある事象 Aが生じる確率 P(A) P(A) = \cfrac{n(A)}{n(U)}、ある事象 Bが生じる確率 P(B) P(B) = \cfrac{n(B)}{n(U)}と表されますね。
この考え方は中学校で初めて確率を学んだときに教わったと思います。
例えば 10本中 2本当たりが入っているようなくじ引きで、あたりを引く確率を考えてみると
 n(U) = 10であり、 n(当たり) = 2なので、 P(当たり) = \cfrac{2}{10} = \cfrac{1}{5}と計算できます。
 
次に条件付き確率では、“事象 Aが生じたという条件の下で”の確率なので、すでに事象 Aについては発生しているとわかっています。
(少なくとも発生していると“仮定”しています)
ですので、全事象はもはや Uではなく、 Aであると考えることができます。
ということは事象 Aの外側については考えなくても良いので、このときに生じる事象 B (A \cap B)の部分だと考えられます。
従って、事象 Aが生じたという条件の下で、事象 Bが生じる確率は
 P_A(B) = \cfrac{n(A \cap B)}{n(A)}
と書くことができます。
この式の分母分子を n(U)で割っておくと
 P_A(B) = \cfrac{\frac{n(A \cap B)}{n(U)}}{\frac{n(A)}{n(U)}} \\ \quad \quad = \cfrac{P(A \cap B)}{P(A)}
と上に書いた公式の形を導くことができました。
 
これで条件付き確率の公式と、その意味については理解できたのではないでしょうか。
しかし、式はわかってもまだ「条件付き確率自体がそもそも何なのか」という疑問は解消されていないと思います。
ですので次はこの疑問に答えていきたいと思います!
 
 

条件付き確率のイメージ

通常の確率は、何かしらの出来事が発生する可能性を考えたかったのでした。

例えば「宝くじを買ったら1等が当たるかなぁ」や「明日は晴れるかなぁ」ということが気になっており、その出来事がどれくらい発生しそうかということを知りたいので確率というものを求めるのです。

 

しかし、ある出来事が発生するかどうかというのはそんなに単純な話ではなく、様々な条件が絡んでくるはずです。

例えば明日の天気を例にしても「今は梅雨だ」や「台風が近づいてきている」、「日本の周りに目立った雨雲はない」といった状況(条件)によっても、明日の天気が晴れである確率は変わってしまうはずです。

 

ということは、ある条件に限った状況を考えてより正確に可能性を見積もりたい、という気持ちになるかもしれませんね。

そこで必要になってくるのが条件付き確率です。

 

先ほどの天気の話を例に、もう少し具体的に説明しましょう。

(*わかりやすく説明したいので、多少正確ではない表現もあるかと思いますがご容赦ください)

 

例えば昨年東京では、1年間(365日間)のうち雨が降った日が100日間だったとします。

そうすると、東京である日雨が降る確率は \cfrac{100}{365} = 約27%です。

ただ、梅雨の時期(ここでは6月だということにしましょう)は1ヶ月間(30日間)のうち雨が降った日が20日間だったとすると、この時期に雨が降る確率は \cfrac{20}{30} = 約67%です。

つまり今が6月だとすると、明日雨が降る確率は27%くらいだから傘は持っていかなくていいかと外出してしまうと、実は6月なので雨が降る確率は67%もあり、雨に打たれてしまう可能性が高いですね。 

 

この例はかなり極端な話ですし、梅雨の方が雨が降る確率が高いのは当然だと思うでしょう。

ただ、このようにある条件があると確率が変わるというのは世の中では多いです。

もう少し実用的な例は下の例題で扱いたいと思います。

 

ここで、ポイントとなってくるのが“条件によって確率が変わる”ということです。

これは確率の問題では非復元抽出(くじ引き)の問題の状況ですね!

ですので、入試では条件付き確率の問題は独立試行ではなく非復元抽出の問題と絡めて出題されることが多いです。

非復元抽出(くじ引き)の問題についての解説にはコチラの記事も併せてご覧ください!

hmorinari.hatenablog.com

非復元抽出の、より詳しい解説はコチラ!

coconala.com

 

 

例題を用いた解説

ここまでの説明で、条件付き確率の公式とそのイメージがある程度は理解できたと思います。

そこで、例題を用いてより一層理解を深めていきましょう!

ちなみにこの例題は条件付き確率の分野においては非常に有名で、いろいろなところで紹介・解説されています。

 

(例題)
一般的に1,000人に1人 (= 0.1\%)が罹っている病気があるとする。A君はこの病気に罹っているかを調べるために病院で検査を行なった。
この検査では、実際に病気に罹っている場合には95%の確率で陽性になるが、病気に罹っていない場合でも2%の確率で陽性となってしまうという。
A君がこの検査を受けて陽性だったとき、実際にこの病気に罹っている確率を求めよ。 

 

この問題において求めたい確率は「検査で陽性だった」という条件の下で「実際に病気に罹っている」確率です。

つまり前半の「検査で陽性だった」というのが今までの説明でいうところの事象 Aであり、「病気に罹っている」というのが事象 Bです。

求めたい確率は P_A(B) = \cfrac{P(A \cap B)}{P(A)}なので、これを計算するためにまずは P(A) P(A \cap B)を求めていきましょう。

 

まずは P(A)について、検査で陽性となるのは

「実際に病気に罹っていて陽性となる」

or

「実際は病気に罹っていないが陽性となってしまう」

の2通りが考えられるので

 P(A) = \cfrac{1}{1000} \cdot \cfrac{95}{100} + \cfrac{999}{1000} \cdot \cfrac{2}{100} 

となります。 

また、 P(A \cap B)について、これは「実際に病気に罹っている( B)」かつ「検査で陽性となる( A)」確率なので

 P(A \cap B) = \cfrac{1}{1000} \cdot \cfrac{95}{100}

となります。

 

従って、求める確率は 

 P_A(B) = \cfrac{\cfrac{1}{1000} \cdot \cfrac{95}{100}}{\cfrac{1}{1000} \cdot \cfrac{95}{100} + \cfrac{999}{1000} \cdot \cfrac{2}{100}} \\ \quad \quad = 約4.5\% 

と計算できます。

意外と低い確率ですね。なのですぐさま「病気に罹っている」と絶望する必要はないのです。

かと言ってでは検査をする意味がないと言っているのではありません。

例えばもう一度検査をして、もう一度陽性だったとしましょう。

そのときに実際に病気に罹っている確率は、先ほどの式で 0.1\%だった部分を 4.5\%に置き換えて同様の計算をすればよく、この確率は

 P_{A'}(B) = 約69.1\%

となります。

2回検査を受けることで、かなり精度を高められることがわかりますね!

(ですので検査が意味のないものであるということは決してありません)

 

 

まとめ

どうでしょうか。条件付き確率について、理解が深まったと思ってもらえれば幸いです。

とはいえ、受験では公式を覚えていないと問題を解けないので、まずは公式と計算方法をしっかりと覚えることから始めましょう!

 

【受験数学】位置ベクトルの問題の解き方を徹底解説!!【ベクトル】(例題つき)

今回は大学入試の数学でも頻出分野であるベクトルの問題について、その解き方を解説していきます。

 

図形の問題を解く方法は、大きく分けると

  1. 図形的性質に注目して幾何的に解く
  2. 座標を設定して座標幾何として解く
  3. 位置ベクトルを用いて解く

の3種類に分類されます。

 

このうち1.の幾何的な解法は、ひらめきが必要な場合が多く、他の解法に比べて入試本番では思いつかない可能性が高いです。

ですので、図形の問題については基本的には2.か3.の解法を用いることをお勧めします!

 

2.の解法では座標を設定するので、ひらめきに頼らず機械的に解くことができます。

また、座標がわかっているため成分ベクトルを用いることも多いです。

 

3.の解法についても位置ベクトルの問題として機械的に処理することができますが、2.の解法よりは汎用性の面で劣ります。

しかし、計算自体は2.よりも平易になることも多いので、3.も非常に有効な解法です。

 

今回はこれらの中でも3.の位置ベクトルを用いた解法について詳しく解説していきたいと思います!

 

そのために、まずは例題を挙げておきます。

 

(例題)
 OA=1, OB=\sqrt{2}, OC=2, AB=1, BC=\sqrt{2}, CA=2の四面体 OABCがある。辺 OA 2:1に内分する点を P、辺 OBの中点を Q、辺 OC 1:2に内分する点を Rとし、さらに三角形 ABCの重心を Gとする。
また、 \overrightarrow{OA} = \overrightarrow{a}, \overrightarrow{OB} = \overrightarrow{b}, \overrightarrow{OC} = \overrightarrow{c}と書く。
このとき、次の(1)〜(3)の問いに答えよ。

(1) 直線 OGと、3点 PQRを通る平面との交点を Dとするとき、 \overrightarrow{OD} \overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}を用いて表せ。
(2) 点 Dから平面 ABCに垂線 DHを引くとき、 \overrightarrow{OH} \overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}を用いて表せ。
 

それでは、ここからはベクトルの問題の分類について説明したのち、位置ベクトルの解法の概要について述べ、例題を用いた具体的な解法の解説を行なっていきたいと思います!

 

目次



 

ベクトルの問題の分類

ベクトルの問題は大きく2種類に分類することができます。

その2種類の分け方はなんでしょうか、と問われた場合、「平面ベクトル」と「空間ベクトル」と答える人が多いのではないでしょうか。

確かにこのような分け方も一つの分け方かもしれませんが、受験数学においてはあまりお勧めできません。

ではどのように分けるのかというと、既にお気づきの人もいるかもしれませんが、「位置ベクトル」と「成分ベクトル」という分け方をします!

理由は単純で、この2種類で解法が異なるからです。

逆に言ってしまえば、「平面ベクトル」と「空間ベクトル」の問題では解法に差がないということです!

しかし、多くの参考書やテキストでは「平面ベクトル」と「空間ベクトル」で章分けされており、そのせいでこれらは別物だという印象を持ってしまっている受験生が多いのではないでしょうか。

 

本記事では冒頭でも述べましたし、タイトルにも記載の通り「位置ベクトル」の解説を行なっていきますので、そのイメージを持っておいてください!

 

位置ベクトルの解法の手順

冒頭では、位置ベクトルの解法を用いれば問題を機械的に解くことができると書きました。

なのでここではまず、その機械的に解く手順について説明していきたいと思います。

位置ベクトルの解法の手順は以下の4つのステップになります!

  • Step1) 始点を決める
  • Step2) 基本ベクトルを決める
  • Step3) 問題文の条件を全てベクトルの式として立式する
  • Step4) Step3で立てた条件式の始点をStep1で決めたものに揃え、ベクトルはStep2で決めた基本ベクトルで表す

この4つのステップを順に行いさえすれば、基本的にはあらゆる位置ベクトルの問題を解くことができます!

それではここからは、上の例題を用いて具体的に解説していきます。

 

例題を用いた解説

 (1) 

Step1) 始点を決める

まずは位置ベクトルの始点を決めましょう!

基本的には自由に決めることができますが、多くの場合は点 Aや点 Oなどといった問題の中でも代表的な点を選択します。

この問題でも、点 Oを始点とすることにしましょう!

 

Step2) 基本ベクトルを決める

次に基本ベクトルを決めましょう。基本ベクトルとは、他のベクトルを表すために使う、最も基本となるベクトルだと思ってください。

2次元の場合は2つ、3次元の場合は3つ選びます。

今回は3次元の問題なので、3つ選ぶことになりますが、これも問題文で与えられているように \overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}を用いることにしましょう。

 

Step3) 問題文の条件を全てベクトルの式として立式する

さて、条件を立式していきましょう。この段階では始点や基本ベクトルについて特に意識する必要はありません。

とにかく漏れなく、網羅的に全ての条件を洗い出すことに集中しましょう!

 

まずは(1)、(2)に共通の条件についてです。

四面体 OABCの辺の長さの条件より

 |\overrightarrow{a}| = 1, \quad |\overrightarrow{b}| = \sqrt{2}, \quad  |\overrightarrow{c}| = 2

 \overrightarrow{a} \cdot \overrightarrow{b} = 1,\quad \overrightarrow{b} \cdot \overrightarrow{c} = 2,\quad \overrightarrow{c} \cdot \overrightarrow{a} = \cfrac{1}{2}

となります。

 

また、4点 P, Q, R, Gの条件より

 \overrightarrow{OP} = \cfrac{2}{3}\overrightarrow{a}

 \overrightarrow{OQ} = \cfrac{1}{2}\overrightarrow{b}

 \overrightarrow{OR} = \cfrac{1}{3}\overrightarrow{c}

 \overrightarrow{OG} = \cfrac{1}{3}\biggl( \overrightarrow{a} + \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} \biggr)

と立式できます。

 

次に(1)の問題の条件でを見ていきましょう。

 Dについて、これは直線 OG上の点であり、かつ平面 PQR上の点であるので

 \overrightarrow{OD} = k \overrightarrow{OG}

 \overrightarrow{OD} = s \overrightarrow{OP} + t \overrightarrow{OQ} + (1 - s - t) \overrightarrow{OR}

 

 

となります。

これで、(1)については全ての条件を列挙し、立式することができましたね!

では次のステップに進みましょう。

 

Step4) Step3で立てた条件式の始点をStep1で決めたものに揃え、ベクトルはStep2で決めた基本ベクトルで表す

Step3で立てた式を見ていきましょう。

 \overrightarrow{OP}, \overrightarrow{OQ}, \overrightarrow{OR}, \overrightarrow{OG}については始点が Oに揃っており、ベクトルも基本ベクトルで表されています。

 

 \overrightarrow{OD}については、始点は揃っているものの、基本ベクトルで表されていません。

なので、この式を変形していきましょう!

まずは1つ目の式について、 \overrightarrow{OG}を消去してあげると

 \overrightarrow{OD} = \cfrac{k}{3} \biggl( \overrightarrow{a} + \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} \biggr)

と書くことができます。

次に2つ目の式についても同様に基本ベクトルで表すと

 \overrightarrow{OD} = \cfrac{2s}{3} \overrightarrow{a} + \cfrac{t}{2} \overrightarrow{b} + \cfrac{1 - s - t}{3} \overrightarrow{c}

となります。

これにより、 \overrightarrow{OD}が2通りの式で表すことができたので、辺々を比較すると 

  \cfrac{k}{3} = \cfrac{2s}{3}

  \cfrac{k}{3} = \cfrac{t}{2}

  \cfrac{k}{3} = \cfrac{1 - s - t}{3}

という連立方程式が導き出されます。

これを解くと、 k = \cfrac{6}{13}と求められるので

 \overrightarrow{OD} = \cfrac{2}{13} \biggl( \overrightarrow{a} + \overrightarrow{b} + \overrightarrow{c} \biggr)

と求めることができました!

(* \overrightarrow{OD}を求めるだけであれば kだけ求められれば十分なので、 s tについては計算していません)

 

では次に(2)について解いていきましょう!

(2)

Step1) 始点を決める

Step1は(1)と同様です。

 

Step2) 基本ベクトルを決める

こちらも(1)と同様です。

 

Step3) 問題文の条件を全てベクトルの式として立式する

ここでは新しい(2)での新しい条件について立式していきましょう。

(2)で新しく現れたものといえば点 Hなので、この点に対する条件を列挙していきます。

 Hは平面ABC上の点なので、改めて s, tを用いて

 \overrightarrow{OH} = s \overrightarrow{a} + t \overrightarrow{b} + (1-s-t)\overrightarrow{c}

と書くことができます。

また、 DH \perp (平面ABC)なので

 \overrightarrow{DH} \cdot \overrightarrow{AB} = 0

 \overrightarrow{DH} \cdot \overrightarrow{AC} = 0

と書くことができます!

これで全ての条件を立式することができたので、Step4へと進みましょう!

 

Step4) Step3で立てた条件式の始点をStep1で決めたものに揃え、ベクトルはStep2で決めた基本ベクトルで表す

Step3)で立式した条件式について、始点を Oに揃え、ベクトルは全て基本ベクトルで表していきます!

 

1つ目の \overrightarrow{OH}についての式は既にOKです!

 

2つ目の式について

 (左辺) = \overrightarrow{DH} \cdot \overrightarrow{AB} \\ \quad = \bigl( \overrightarrow{OH} - \overrightarrow{OD} \bigr) \cdot \bigl( \overrightarrow{b} - \overrightarrow{a} \bigr) \\ \quad = \biggl( (s - \frac{2}{13}) \overrightarrow{a} + (t - \frac{2}{13}) \overrightarrow{b}+ (\frac{11}{13} - s - t) \overrightarrow{c}  \biggr) \cdot \biggl( \overrightarrow{b} - \overrightarrow{a} \biggr) \\ \quad = \biggl( (s - \frac{2}{13}) + (t - \frac{2}{13}) \cdot 2 + (\frac{11}{13} - s - t) \cdot 2 \biggr) - \biggl( (s - \frac{2}{13}) + (t - \frac{2}{13}) + (\frac{11}{13} - s - t) \cdot \frac{1}{2} \biggr) \\ \quad = - \cfrac{3}{2} s - \cfrac{1}{2} t + \cfrac{29}{26} = 0 \\ \quad \Leftrightarrow 3 s + t = \cfrac{29}{13}

 

3つ目の式について

 (左辺) = \overrightarrow{DH} \cdot \overrightarrow{AC} \\ \quad = \bigl( \overrightarrow{OH} - \overrightarrow{OD} \bigr) \cdot \bigl( \overrightarrow{c} - \overrightarrow{a} \bigr) \\ \quad = \biggl( (s - \frac{2}{13}) \overrightarrow{a} + (t - \frac{2}{13}) \overrightarrow{b}+ (\frac{11}{13} - s - t) \overrightarrow{c}  \biggr) \cdot \biggl( \overrightarrow{c} - \overrightarrow{a} \biggr) \\ \quad = \biggl( (s - \frac{2}{13}) \cdot \frac{1}{2} + (t - \frac{2}{13}) \cdot 2 + (\frac{11}{13} - s - t) \cdot 4 \biggr) - \biggl( (s - \frac{2}{13}) + (t - \frac{2}{13}) + (\frac{11}{13} - s - t) \cdot \frac{1}{2} \biggr) \\ \quad = - 4 s - \cfrac{5}{2} t + \cfrac{75}{26} = 0 \\ \quad \Leftrightarrow 8 s + 5 t = \cfrac{75}{13}

 

これらを解くと

 s = \cfrac{10}{13}

 t = - \cfrac{1}{13}

となるので、 \overrightarrow{OH}

 \overrightarrow{OH} = \cfrac{10}{13} \overrightarrow{a} - \cfrac{1}{13} \overrightarrow{b} + \cfrac{4}{13} \overrightarrow{c}

と求めることができました!

 

まとめ

  • ベクトルの問題は「位置ベクトル」と「成分ベクトル」で解法が異なる
  • 「位置ベクトル」の解法は4ステップの決まった手順を実行するだけ