【受験数学】くじ引き(非復元抽出)の解き方を徹底解説!!【確率】(例題つき)

今回は大学入試の数学でも良く出題されるくじ引きの確率の問題について、その解き方を解説していきます。

くじ引きの問題は確率の中でも非復元抽出という分野に位置付けられており、独立試行の問題とは解法が異なります。

しかし、受験生の多くは独立試行の問題と同じ解法を用いてしまっており、意外と非復元抽出(くじ引き)の問題に対する解法を知らない人が多いのではないかと思います。

そこで今回は、このくじ引きの問題の解法を丁寧に解説していきます!

 

まずは例題を挙げておきます。

 

(例題)
当たりのくじが2枚、外れのくじが10枚入った袋がある。この袋の中から、A君、B君、C君の3人がこの順に1枚ずつ引いていき、引いたくじは元に戻さない。
この試行を2枚のくじが両方とも取り出されるまで繰り返すとき、以下の問いに答えよ。
(*ただし、一度当たりを引いた人も、順にくじを引き続けるものとする)
(1) A君、B君、C君が1度目の試行で当たりを引く確率をそれぞれ求めよ。
(2) B君が2枚の当たりを両方とも引く確率を求めよ。
(3) A君とB君が当たりを引く確率を求めよ。
 

 

このようなくじ引きの問題ですが、実は独立試行の問題とは違った解法を用います。

 

ここではまず、くじ引き(非復元抽出)の問題を解く解法について概要を説明した後、上の例題を用いて具体的に解説していきます!

 

目次



 

くじ引き(非復元抽出)の問題を解く定番の解法

くじ引きの問題を解く場合は、独立試行の問題とは違い、場合の数の考え方を用い、全てのものの順列として解きます。

そして、並び替えたものを左から順に取り出していくと考えることで、擬似的に非復元抽出の状況を再現するというわけです。

ここでのポイントは、実際の問題設定では途中でくじを取り出すことをやめるとしても、計算上はすべてのくじを取り出すものとして扱う、ということです。

具体的には

 (求める確率) = \cfrac{(求める事象)}{(全事象)}

 

として計算します。

 

独立試行の問題では、各試行の結果が互いの確率に影響を与えないので、確率の積として計算していました。

これが独立試行との解法の違いです。

 

 

例題を用いた解説

 

それではここからは、上の例題を用いて具体的に解説していきます。

 

 (1) A君、B君、C君が1度目の試行で当たりを引く確率をそれぞれ求めよ。

 この問題については、独立試行の問題の解法である、確率の積として計算する方法と、非復元抽出の本来の解法である、順列を用いた解法の2通りの解法を比較して見ましょう。

まずは独立試行の解法からです。

<確率の積として計算する>

・A君が当たりを引く確率について

12枚中、当たりのくじは2枚なので、

 (A君が当たりを引く確率) = \cfrac{2}{12} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

となります。

 

・B君が当たりを引く確率について

「A君が当たりを引き、B君も当たりを引く」

or

「A君が外れを引き、B君が当たりを引く」

ときなので、

 (B君が当たりを引く確率) = \cfrac{2}{12}\cdot\cfrac{1}{11} + \cfrac{10}{12}\cdot\cfrac{2}{11} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

となります。

 

・C君が当たりを引く確率について

「A君が当たり、B君は外れを引き、C君が当たりを引く」

or

「A君が外れ、B君が当たりを引き、C君が当たりを引く」

or

「A君、B君が外れを引き、C君が当たりを引く」

ときなので、

 (C君が当たりを引く確率) = \cfrac{2}{12}\cdot\cfrac{10}{11}\cdot\cfrac{1}{10} + \cfrac{10}{12}\cdot\cfrac{2}{11}\cdot\cfrac{1}{10} + \cfrac{10}{12}\cdot\cfrac{9}{11}\cdot\cfrac{2}{10} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

となります。

 

確率の積として計算する場合は、注目する試行が後半になるにつれて場合分けが増え、計算が面倒になっていることがわかると思います。

 

では、続いて非復元抽出の問題に対する本来の解法で解いてみましょう。

 

<順列を用いて計算する>

まず分母にあたる全事象を計算しておきましょう。これは12枚のくじ全ての並び替えなので 12!通りです。

これは(1)〜(3)まですべての問題に共通です。

(*確率の問題では原則としてすべてのものを区別します。同じ当たりくじ、同じ外れくじであってもすべて別のくじとして扱うということです。)

・A君が当たりを引く確率について

これは1番左に当たりくじがくる順列を考えればよく、 _2C_1 \cdot 11!通りです。

つまり

 (A君が当たりを引く確率) = \cfrac{_2C_1 \cdot 11!}{12!} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

 

・B君が当たりを引く確率について

これは左から2番目に当たりくじがくる順列を考えれな良いので、先ほどと同じく、

 _2C_1 \cdot 11!通りです。

つまり

 (B君が当たりを引く確率) = \cfrac{_2C_1 \cdot 11!}{12!} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

 

・C君が当たりを引く確率について

これは左から3番目に当たりくじがくる順列を考えれな良いので、これも同じく、

 _2C_1 \cdot 11!通りです。

つまり

 (C君が当たりを引く確率) = \cfrac{_2C_1 \cdot 11!}{12!} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

 

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これが順列を用いて計算するということです。

どれも同じ扱いができ、計算も非常にシンプルでしたね!

 

(2) B君が2枚の当たりを両方とも引く確率を求めよ。

この問題を独立試行の問題のように確率の積として計算しようとした場合、B君がくじを引く4回の試行のうち、どの2回で当たりくじを引くかによって場合わけを行います。

つまり _4C_2 = 6通りの場合わけが必要であるということです。

ここでは詳しい解説は割愛して、本題に入りましょう。

順列を用いて計算していきます。

 

全事象は同様に 12!通りです。

B君が2枚の当たりを両方とも引くのは、下図のようにB君がくじを引く4回の試行のうち、いずれか2回の試行のタイミングに当たりくじが並ぶときなので、順列は

 _4C_2 \cdot 2! \cdot 10!通り

です。

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従って、求める確率は

 (B君が2枚の当たりを両方とも引く確率) = \cfrac{_4C_2 \cdot 2! \cdot 10!}{12!} \\ \hspace{7cm} = \cfrac{1}{11}

となります。

こちらも場合わけをすることなく非常にシンプルに計算できますね! 

 

(3) A君とB君が当たりを引く確率を求めよ。

この問題については独立試行の問題と同じように計算しようとすると、A君、B君のそれぞれが当たりを引くタイミングに注目して _4C_1 \cdot _4C_1 = 16通りの場合わけが必要になります。

 

順列を用いる場合、下図のようにA君が当たりを引くタイミングとB君が当たりを引くタイミングがそれぞれ 4通り存在するので、順列は

  

 _4C_1 \cdot _4C_1 \cdot 2! \cdot 10!通り

です。

 

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従って、求める確率は

 (A君とB君が当たりを引く確率) = \cfrac{_4C_1 \cdot _4C_1 \cdot 2! \cdot 10!}{12!} \\ \hspace{6cm} = \cfrac{8}{33}

となります。

 

まとめ

  • 独立試行の問題は確率の積として計算する
  • くじ引き(非復元抽出)の問題は順列を用いて計算する
  • すべてのものの順列として扱う
  • すべてのものを区別する