【受験数学】数列の極限の解き方(はさみうちの原理・平均値の定理)を徹底解説!!【極限】(例題つき)

 今回は大学入試においても非常に重要な分野である数列の極限の解き方について解説していきます。 

まず、漸化式が与えられるタイプの数列の極限の例題を2題ほど挙げておきます。

 

(例題1)
数列 \{a_n\}の漸化式が
 a_{n+1} = {a_n}^2, \quad a_1 = \frac{1}{2}
で与えられるとき、数列 \{a_n\}極限値 \lim_{n \to \infty}{a_n}を求めよ。
(例題2)
数列 \{a_n\}の漸化式が
 a_{n+1} = \sqrt{\cfrac{2}{2 a_n + 7}}, \quad a_1 = 0
で与えられるとき、数列 \{a_n\}極限値 \lim_{n \to \infty}{a_n}を求めよ。
 

このような数列の極限の問題では解き始めが肝心です。

出だしで解法の選択を誤ってしまうと、かなり遠回りな計算をする羽目になったり、あるいはそもそも解くことができなかったりします。

 

従って漸化式が与えられるタイプの数列の極限の問題では、漸化式をしっかりと観察し、解法を分類してから解き始めることが重要です!

 

ここではまず、漸化式を観察する際の着眼点とその後の2種類の解法について紹介した後、より難易度が高く苦手意識を持った受験生が多いと思われる解法について詳しく解説していきます!

 

目次



 

漸化式を観察する着眼点と2種類の解法

漸化式を観察するときの着眼点はズバリ「その漸化式を解くことができるかどうか」ということになります。

そして漸化式が解ける形かどうかによって解法は次のように分かれます。

  1. 漸化式を解くことができる → 一般項を求めてから極限を考える
  2. 漸化式を解くことができない → 極限値を予想し、はさみうちの原理で証明する

ここで改めて上に書いた例題を見てみましょう。

例題1については、両辺対数を取ることで等比数列の形に持ち込むことができるので、漸化式を解くことができます。

つまり、一般項を求めてから極限を考えれば良いパターンです。

 

一方で例題2については漸化式を解くことができません。

従って極限値を予想し、数列がその予想した値に収束することを証明することになります。

この証明で用いるのがはさみうちの原理です。

(あとは平均値の定理も用います)

 

ここからは漸化式を解くことができない(一般項を求めることができない)問題についての解法に焦点を当てて、上で書いた例題を用いながら解説していきます。

 

極限値を予想し、はさみうちの原理で証明する解法

はさみうちの原理を用いる数列の極限の問題の解法には3段階の決まった手順があります。

そしてその手順自体はどのような問題であったとしても共通です。

従ってこの3つの手順をしっかりと覚え、数問の練習問題で使い方を練習すれば、数列の極限の問題を解くことができるようになります。

 

3つの手順は以下です。

  • Step1) 特性方程式を用いて極限値を予想する
  • Step2) はさみうちの原理に用いる不等式を導く
       (ここで平均値の定理を用いる)
  • Step3) はさみうちの原理を用いて証明する

 

一つひとつ見ていきましょう!

 

Step1) 特性方程式を用いて極限値を予想する

このステップでは、与えられた漸化式に対する特性方程式を立てて極限値を予想します。

抽象的な説明をしてもわかりにくいので、具体例で考えましょう。

 

特性方程式とは、漸化式の数列の部分 a_{n+1} a_n \alphaなどで置き換えたものです。

従って今回の例題における特性方程式

 \alpha = \sqrt{\cfrac{2}{2 \alpha + 7}}

となります。

そしてこれを解くと

 \alpha = \cfrac{1}{2}

と求めることができます。

 

この \alpha = \cfrac{1}{2}極限値の予想値になります。

(*数列 \{a_n\}が収束するとき、 a_{n+1} a_nは共に同じ値に収束する必要があるからです)

 

Step2) 平均値の定理を用いて不等式を導出する

次に、Step1)で求めた予想値と平均値の定理を用いて、はさみうちの原理で証明する際に必要な不等式を導出します。

はさみうちの原理を用いて極限値を求めようとする場合、一般的には目的の式(←極限値を求めたいもの。今回だと a_nがこれにあたる)の両側を不等式ではさむ必要があります。

つまり、目的の式より大きい式と小さい式の両方を見つけ出す必要がありますが、極限値が予測できている場合は片方で良いことがわかっています。

どういうことかというと、一般的なはさみうちの原理の形は

(小さい式)  \leqq (目的の式)  \leqq (大きい式)

とする必要があるのに対し、極限値が予測できている場合は

|(目的の式) - (予想値)| \leqq (0に収束する式)

を導出すれば良いのです!

 

漸化式が与えられた数列の極限の問題のように、極限値を予測することができる場合、導出しなければならない式が一つで済むので非常に楽になります。

さらに、この(0に収束する式)と書いた式も、平均値の定理を用いれば自然と求めることができます。

 

 

具体的に不等式を導出していきましょう。

まずは漸化式に注目して、 a_{n+1} = f(a_n)となるように関数 f(x) f(x) = \sqrt{\cfrac{2}{2x + 7}}とおきます。

このようにおくと、極限の予想値 \alpha=\cfrac{1}{2}に対して、 \alpha = f(\alpha)が成り立ちます。

これが後々非常に重要になります。

 

 この関数 f(x)について、 a_n \alpha=\cfrac{1}{2}の間の xに対して平均値の定理を用いると

 \cfrac{f(a_n) - f(\alpha)}{a_n - \alpha} = f'(c) \\ \hspace{2.5cm} = - \sqrt{\cfrac{2}{(2c + 7)^\frac{3}{2}}}

(ただし、 ca_n\alphaの間の実数)

が成り立つことになります。

 

左辺の分子に注目すると、これは f(a_n) - f(\alpha) = a_{n+1} - \alphaとなるので、

これを上式に代入し、両辺の絶対値をとってあげると

 \left| \cfrac{a_{n+1} - \alpha}{a_n - \alpha} \right| = \sqrt{\cfrac{2}{(2c + 7)^\frac{3}{2}}}

となります。

 

左辺の分母を払って式変形すると

 \left| a_{n+1} - \alpha \right| = \sqrt{\cfrac{2}{(2c + 7)^\frac{3}{2}}} \left| a_n - \alpha \right|

となります。

 

さらに\sqrt{\cfrac{2}{(2c + 7)^\frac{3}{2}}} < \sqrt{\cfrac{2}{7}}であることから

 \left| a_{n+1} - \alpha \right| < \sqrt{\cfrac{2}{7}}\left| a_n - \alpha \right|

という不等式を導出することができます。

 

この不等式の形に注目すると、等比数列と同じような形をしています。

従って等比数列の一般項を求めるときと同様の計算により

 \left| a_{n} - \alpha \right| <\left| a_1 - \alpha \right| \cdot \bigl( \sqrt{\frac{2}{7}} \bigr)^{n-1} 

と変形することができます。

これで目的としていた形の不等式を導出することができました!

(*平均値の定理を用いることなく、単純な式変形で不等式を導出する方法もありますが、そのような方法はひらめきや思いつきが必要となります。ここではより汎用的に用いることができる方法として平均値の定理を用いる方法を説明しました。平均値の定理を用いない方法についてはコチラで解説しています!)

coconala.com

 

次のステップでいよいよ証明していきましょう。

 

Step3) はさみうちの原理を用いて証明する

最後にStep2)で作った不等式を用いて、はさみうちの原理により実際の極限値と予想値が一致することを証明しましょう。

 

Step2)で求めた不等式

 \left| a_{n} - \alpha \right| <\left| a_1 - \alpha \right| \cdot \bigl( \sqrt{\frac{2}{7}} \bigr)^{n-1} 

の右辺は

 n \to \inftyのとき、 (右辺) \to 0となるので

 (左辺) =  \left| a_{n} - \alpha \right|  \left| a_{n} - \alpha \right| \to 0となります。

(*左辺は絶対値に囲まれているので、0以上であることは保証されているから)

 

従って、 a_n \to \alpha = \cfrac{1}{2}と、最初に求めた予想値に収束することを示すことができましたね!

 

まとめ

  • 漸化式が与えられるタイプの数列の極限の問題は、漸化式を解くことができるかどうかで解法が変わる
  • 漸化式が解ける場合は、一般項を求めてから極限を考える
  • 漸化式が解けない場合は、極限値を予想して、はさみうちの原理と平均値の定理を用いてその値に収束することを証明する