【受験数学】くじ引き(非復元抽出)の解き方を徹底解説!!【確率】(例題つき)

今回は大学入試の数学でも良く出題されるくじ引きの確率の問題について、その解き方を解説していきます。

くじ引きの問題は確率の中でも非復元抽出という分野に位置付けられており、独立試行の問題とは解法が異なります。

しかし、受験生の多くは独立試行の問題と同じ解法を用いてしまっており、意外と非復元抽出(くじ引き)の問題に対する解法を知らない人が多いのではないかと思います。

そこで今回は、このくじ引きの問題の解法を丁寧に解説していきます!

 

まずは例題を挙げておきます。

 

(例題)
当たりのくじが2枚、外れのくじが10枚入った袋がある。この袋の中から、A君、B君、C君の3人がこの順に1枚ずつ引いていき、引いたくじは元に戻さない。
この試行を2枚のくじが両方とも取り出されるまで繰り返すとき、以下の問いに答えよ。
(*ただし、一度当たりを引いた人も、順にくじを引き続けるものとする)
(1) A君、B君、C君が1度目の試行で当たりを引く確率をそれぞれ求めよ。
(2) B君が2枚の当たりを両方とも引く確率を求めよ。
(3) A君とB君が当たりを引く確率を求めよ。
 

 

このようなくじ引きの問題ですが、実は独立試行の問題とは違った解法を用います。

 

ここではまず、くじ引き(非復元抽出)の問題を解く解法について概要を説明した後、上の例題を用いて具体的に解説していきます!

 

目次



 

くじ引き(非復元抽出)の問題を解く定番の解法

くじ引きの問題を解く場合は、独立試行の問題とは違い、場合の数の考え方を用い、全てのものの順列として解きます。

そして、並び替えたものを左から順に取り出していくと考えることで、擬似的に非復元抽出の状況を再現するというわけです。

ここでのポイントは、実際の問題設定では途中でくじを取り出すことをやめるとしても、計算上はすべてのくじを取り出すものとして扱う、ということです。

具体的には

 (求める確率) = \cfrac{(求める事象)}{(全事象)}

 

として計算します。

 

独立試行の問題では、各試行の結果が互いの確率に影響を与えないので、確率の積として計算していました。

これが独立試行との解法の違いです。

 

 

例題を用いた解説

 

それではここからは、上の例題を用いて具体的に解説していきます。

 

 (1) A君、B君、C君が1度目の試行で当たりを引く確率をそれぞれ求めよ。

 この問題については、独立試行の問題の解法である、確率の積として計算する方法と、非復元抽出の本来の解法である、順列を用いた解法の2通りの解法を比較して見ましょう。

まずは独立試行の解法からです。

<確率の積として計算する>

・A君が当たりを引く確率について

12枚中、当たりのくじは2枚なので、

 (A君が当たりを引く確率) = \cfrac{2}{12} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

となります。

 

・B君が当たりを引く確率について

「A君が当たりを引き、B君も当たりを引く」

or

「A君が外れを引き、B君が当たりを引く」

ときなので、

 (B君が当たりを引く確率) = \cfrac{2}{12}\cdot\cfrac{1}{11} + \cfrac{10}{12}\cdot\cfrac{2}{11} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

となります。

 

・C君が当たりを引く確率について

「A君が当たり、B君は外れを引き、C君が当たりを引く」

or

「A君が外れ、B君が当たりを引き、C君が当たりを引く」

or

「A君、B君が外れを引き、C君が当たりを引く」

ときなので、

 (C君が当たりを引く確率) = \cfrac{2}{12}\cdot\cfrac{10}{11}\cdot\cfrac{1}{10} + \cfrac{10}{12}\cdot\cfrac{2}{11}\cdot\cfrac{1}{10} + \cfrac{10}{12}\cdot\cfrac{9}{11}\cdot\cfrac{2}{10} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

となります。

 

確率の積として計算する場合は、注目する試行が後半になるにつれて場合分けが増え、計算が面倒になっていることがわかると思います。

 

では、続いて非復元抽出の問題に対する本来の解法で解いてみましょう。

 

<順列を用いて計算する>

まず分母にあたる全事象を計算しておきましょう。これは12枚のくじ全ての並び替えなので 12!通りです。

これは(1)〜(3)まですべての問題に共通です。

(*確率の問題では原則としてすべてのものを区別します。同じ当たりくじ、同じ外れくじであってもすべて別のくじとして扱うということです。)

・A君が当たりを引く確率について

これは1番左に当たりくじがくる順列を考えればよく、 _2C_1 \cdot 11!通りです。

つまり

 (A君が当たりを引く確率) = \cfrac{_2C_1 \cdot 11!}{12!} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

 

・B君が当たりを引く確率について

これは左から2番目に当たりくじがくる順列を考えれな良いので、先ほどと同じく、

 _2C_1 \cdot 11!通りです。

つまり

 (B君が当たりを引く確率) = \cfrac{_2C_1 \cdot 11!}{12!} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

 

・C君が当たりを引く確率について

これは左から3番目に当たりくじがくる順列を考えれな良いので、これも同じく、

 _2C_1 \cdot 11!通りです。

つまり

 (C君が当たりを引く確率) = \cfrac{_2C_1 \cdot 11!}{12!} \\ \hspace{5cm} = \cfrac{1}{6}

 

f:id:hmorinari:20190115210259p:plain

 

これが順列を用いて計算するということです。

どれも同じ扱いができ、計算も非常にシンプルでしたね!

 

(2) B君が2枚の当たりを両方とも引く確率を求めよ。

この問題を独立試行の問題のように確率の積として計算しようとした場合、B君がくじを引く4回の試行のうち、どの2回で当たりくじを引くかによって場合わけを行います。

つまり _4C_2 = 6通りの場合わけが必要であるということです。

ここでは詳しい解説は割愛して、本題に入りましょう。

順列を用いて計算していきます。

 

全事象は同様に 12!通りです。

B君が2枚の当たりを両方とも引くのは、下図のようにB君がくじを引く4回の試行のうち、いずれか2回の試行のタイミングに当たりくじが並ぶときなので、順列は

 _4C_2 \cdot 2! \cdot 10!通り

です。

f:id:hmorinari:20190115210249p:plain

 

従って、求める確率は

 (B君が2枚の当たりを両方とも引く確率) = \cfrac{_4C_2 \cdot 2! \cdot 10!}{12!} \\ \hspace{7cm} = \cfrac{1}{11}

となります。

こちらも場合わけをすることなく非常にシンプルに計算できますね! 

 

(3) A君とB君が当たりを引く確率を求めよ。

この問題については独立試行の問題と同じように計算しようとすると、A君、B君のそれぞれが当たりを引くタイミングに注目して _4C_1 \cdot _4C_1 = 16通りの場合わけが必要になります。

 

順列を用いる場合、下図のようにA君が当たりを引くタイミングとB君が当たりを引くタイミングがそれぞれ 4通り存在するので、順列は

  

 _4C_1 \cdot _4C_1 \cdot 2! \cdot 10!通り

です。

 

f:id:hmorinari:20190115210108p:plain

 

従って、求める確率は

 (A君とB君が当たりを引く確率) = \cfrac{_4C_1 \cdot _4C_1 \cdot 2! \cdot 10!}{12!} \\ \hspace{6cm} = \cfrac{8}{33}

となります。

 

まとめ

  • 独立試行の問題は確率の積として計算する
  • くじ引き(非復元抽出)の問題は順列を用いて計算する
  • すべてのものの順列として扱う
  • すべてのものを区別する

 

 

 

 

 

【受験数学】軌跡の問題の解き方を徹底解説!!【軌跡と領域】(例題つき)

 今回は大学入試において、よく出題される分野である軌跡と領域から、軌跡の問題の解き方について解説していきます。 

まず、軌跡の問題として以下に例題を挙げておきます。

 

(例題)
 (x - 2)^2 + y^2 = 4上の原 Oおよび点 A(4, 0)がある。
 Pがこの円周上を動くとき、三角形 OAPの重心 Gの軌跡を求めよ。

 

今回はこの例題を用いて、軌跡の問題を解くための定番の解法について解説していきます。 

 

目次



 

軌跡の問題に対する定番の解法

軌跡の問題は簡単な問題から難しい問題まで、ほとんどすべての問題は同様の考え方、解法によって解くことができます。

そしてその解法は手順化することができ、以下の3つのステップを順に行うことで軌跡を求めることができます。

  • Step1) 軌跡を求めたい点の座標を文字で置く( P(X, Y)など
  • Step2) 問題文の条件をすべて列挙し、立式する
  • Step3) Step1で設定した文字以外を消去し、軌跡を求める

 

軌跡の問題を解く手順はたったのこれだけです。

そのうえ上記の手順のStep1は、座標を文字で置くだけなので、特にやることはありません。

つまり、実質2つのステップを行うだけで、軌跡を求めることができるのです!

 

以下では例題を用いて各ステップでどのような計算を行うのかについて、詳しく解説していきます。

 

Step1) 軌跡を求めたい点の座標を文字で置く

このステップでは軌跡を求めたい点の座標を文字で置けばよいのでしたね。

今回の例題においては三角形 OAPの重心 Gの軌跡を求めたいので、この点について G(X, Y)と置くことにしましょう。

このように座標を設定するだけで、Step1は完了です。

いかがですか?簡単ですね!

それでは次のステップに進みましょう!

 

Step2) 問題文の条件をすべて列挙し、立式する

このステップでは問題文の条件をすべて列挙し、立式していきます。

ここでは条件をまずは日本語でもいいので列挙しきってから、後でまとめて立式するということをお勧めします。

というのも、逐一立式していくと条件を見逃してしまい、後々式が足りないなということになってまた問題文を読むところからやり直しになってしまう可能性があるからです。

まずは条件を列挙するところに集中して、条件を探していきましょう! 

 

では、今回の例題における条件を列挙すると

  1.  Pは円周上を動く
  2.  Gは三角形 OAPの重心である。

となります。

 

このように条件を列挙できれば、次は立式していきましょう。

上の条件1については

 P(2\cos{\theta} + 2, 2\sin{\theta})

 0 < \theta < 2\pi,  \theta \neq \pi

と設定することで立式することができます。

 \thetaについての範囲は、3点 O, A, Pが一直線上に並ばないように設定しました。(つまり、三角形 OAPを作ることができるように設定しました。)

 

次に条件2については

 X = \cfrac{0 + 4 + 2 \cos{\theta} + 2}{3} \\ \quad \quad = \cfrac{2 \cos{\theta}}{3} + 2

 Y = \cfrac{0 + 0 + 2\sin{\theta}}{3} \\ \quad \quad = \cfrac{2 \sin{\theta}}{3}

と立式することができます。

 

これで、条件の列挙と立式が完了しましたね。

ここでのポイントは

 (条件式の数) = (未知数の個数) - 1

となっていることです。

条件式をすべて列挙できているかどうかの指標の一つとして使いましょう。

 

(*条件1については

 P(p, q), \quad (p - 2)^2 + q^2 = 4

と立式しても同じ結果になります。)

 

Step3) Step1で設定した文字以外を消去し、軌跡を求める 

 このステップではいよいよ軌跡を求めていきます。

Step2で列挙した条件式から、Step1で設定した文字(今回は X, Y)以外を消去していきましょう。

 

Step2で求めた X, Yについての条件式から、三角関数 \cos{\theta}, \sin{\theta}を消去すると(正確には \thetaを消去すると)

 (X-2)^2 + Y^2 = \cfrac{4}{9}\cos^2{\theta} + \cfrac{4}{9}\sin^2{\theta} \\ \quad \quad \quad \quad \quad \quad \quad = \cfrac{4}{9}

となります。

 

また、 \thetaについての条件も X, Yの条件に変形しておくと

 Y \neq 0

とすることができます。

これで軌跡が求まりましたね!

 

まとめ

今回のポイントをまとめておきましょう。

  • 軌跡の問題を解く方法は決まっており、手順化することができる
  • 3つのステップを順に行うことで軌跡を求めることができる
  •  (条件式の数) = (未知数の数) - 1の意識を持つ

 

 

【受験数学】数列の極限の解き方(はさみうちの原理・平均値の定理)を徹底解説!!【極限】(例題つき)

 今回は大学入試においても非常に重要な分野である数列の極限の解き方について解説していきます。 

まず、漸化式が与えられるタイプの数列の極限の例題を2題ほど挙げておきます。

 

(例題1)
数列 \{a_n\}の漸化式が
 a_{n+1} = {a_n}^2, \quad a_1 = \frac{1}{2}
で与えられるとき、数列 \{a_n\}極限値 \lim_{n \to \infty}{a_n}を求めよ。
(例題2)
数列 \{a_n\}の漸化式が
 a_{n+1} = \sqrt{\cfrac{2}{2 a_n + 7}}, \quad a_1 = 0
で与えられるとき、数列 \{a_n\}極限値 \lim_{n \to \infty}{a_n}を求めよ。
 

このような数列の極限の問題では解き始めが肝心です。

出だしで解法の選択を誤ってしまうと、かなり遠回りな計算をする羽目になったり、あるいはそもそも解くことができなかったりします。

 

従って漸化式が与えられるタイプの数列の極限の問題では、漸化式をしっかりと観察し、解法を分類してから解き始めることが重要です!

 

ここではまず、漸化式を観察する際の着眼点とその後の2種類の解法について紹介した後、より難易度が高く苦手意識を持った受験生が多いと思われる解法について詳しく解説していきます!

 

目次



 

漸化式を観察する着眼点と2種類の解法

漸化式を観察するときの着眼点はズバリ「その漸化式を解くことができるかどうか」ということになります。

そして漸化式が解ける形かどうかによって解法は次のように分かれます。

  1. 漸化式を解くことができる → 一般項を求めてから極限を考える
  2. 漸化式を解くことができない → 極限値を予想し、はさみうちの原理で証明する

ここで改めて上に書いた例題を見てみましょう。

例題1については、両辺対数を取ることで等比数列の形に持ち込むことができるので、漸化式を解くことができます。

つまり、一般項を求めてから極限を考えれば良いパターンです。

 

一方で例題2については漸化式を解くことができません。

従って極限値を予想し、数列がその予想した値に収束することを証明することになります。

この証明で用いるのがはさみうちの原理です。

(あとは平均値の定理も用います)

 

ここからは漸化式を解くことができない(一般項を求めることができない)問題についての解法に焦点を当てて、上で書いた例題を用いながら解説していきます。

 

極限値を予想し、はさみうちの原理で証明する解法

はさみうちの原理を用いる数列の極限の問題の解法には3段階の決まった手順があります。

そしてその手順自体はどのような問題であったとしても共通です。

従ってこの3つの手順をしっかりと覚え、数問の練習問題で使い方を練習すれば、数列の極限の問題を解くことができるようになります。

 

3つの手順は以下です。

  • Step1) 特性方程式を用いて極限値を予想する
  • Step2) はさみうちの原理に用いる不等式を導く
       (ここで平均値の定理を用いる)
  • Step3) はさみうちの原理を用いて証明する

 

一つひとつ見ていきましょう!

 

Step1) 特性方程式を用いて極限値を予想する

このステップでは、与えられた漸化式に対する特性方程式を立てて極限値を予想します。

抽象的な説明をしてもわかりにくいので、具体例で考えましょう。

 

特性方程式とは、漸化式の数列の部分 a_{n+1} a_n \alphaなどで置き換えたものです。

従って今回の例題における特性方程式

 \alpha = \sqrt{\cfrac{2}{2 \alpha + 7}}

となります。

そしてこれを解くと

 \alpha = \cfrac{1}{2}

と求めることができます。

 

この \alpha = \cfrac{1}{2}極限値の予想値になります。

(*数列 \{a_n\}が収束するとき、 a_{n+1} a_nは共に同じ値に収束する必要があるからです)

 

Step2) 平均値の定理を用いて不等式を導出する

次に、Step1)で求めた予想値と平均値の定理を用いて、はさみうちの原理で証明する際に必要な不等式を導出します。

はさみうちの原理を用いて極限値を求めようとする場合、一般的には目的の式(←極限値を求めたいもの。今回だと a_nがこれにあたる)の両側を不等式ではさむ必要があります。

つまり、目的の式より大きい式と小さい式の両方を見つけ出す必要がありますが、極限値が予測できている場合は片方で良いことがわかっています。

どういうことかというと、一般的なはさみうちの原理の形は

(小さい式)  \leqq (目的の式)  \leqq (大きい式)

とする必要があるのに対し、極限値が予測できている場合は

|(目的の式) - (予想値)| \leqq (0に収束する式)

を導出すれば良いのです!

 

漸化式が与えられた数列の極限の問題のように、極限値を予測することができる場合、導出しなければならない式が一つで済むので非常に楽になります。

さらに、この(0に収束する式)と書いた式も、平均値の定理を用いれば自然と求めることができます。

 

 

具体的に不等式を導出していきましょう。

まずは漸化式に注目して、 a_{n+1} = f(a_n)となるように関数 f(x) f(x) = \sqrt{\cfrac{2}{2x + 7}}とおきます。

このようにおくと、極限の予想値 \alpha=\cfrac{1}{2}に対して、 \alpha = f(\alpha)が成り立ちます。

これが後々非常に重要になります。

 

 この関数 f(x)について、 a_n \alpha=\cfrac{1}{2}の間の xに対して平均値の定理を用いると

 \cfrac{f(a_n) - f(\alpha)}{a_n - \alpha} = f'(c) \\ \hspace{2.5cm} = - \sqrt{\cfrac{2}{(2c + 7)^\frac{3}{2}}}

(ただし、 ca_n\alphaの間の実数)

が成り立つことになります。

 

左辺の分子に注目すると、これは f(a_n) - f(\alpha) = a_{n+1} - \alphaとなるので、

これを上式に代入し、両辺の絶対値をとってあげると

 \left| \cfrac{a_{n+1} - \alpha}{a_n - \alpha} \right| = \sqrt{\cfrac{2}{(2c + 7)^\frac{3}{2}}}

となります。

 

左辺の分母を払って式変形すると

 \left| a_{n+1} - \alpha \right| = \sqrt{\cfrac{2}{(2c + 7)^\frac{3}{2}}} \left| a_n - \alpha \right|

となります。

 

さらに\sqrt{\cfrac{2}{(2c + 7)^\frac{3}{2}}} < \sqrt{\cfrac{2}{7}}であることから

 \left| a_{n+1} - \alpha \right| < \sqrt{\cfrac{2}{7}}\left| a_n - \alpha \right|

という不等式を導出することができます。

 

この不等式の形に注目すると、等比数列と同じような形をしています。

従って等比数列の一般項を求めるときと同様の計算により

 \left| a_{n} - \alpha \right| <\left| a_1 - \alpha \right| \cdot \bigl( \sqrt{\frac{2}{7}} \bigr)^{n-1} 

と変形することができます。

これで目的としていた形の不等式を導出することができました!

(*平均値の定理を用いることなく、単純な式変形で不等式を導出する方法もありますが、そのような方法はひらめきや思いつきが必要となります。ここではより汎用的に用いることができる方法として平均値の定理を用いる方法を説明しました。平均値の定理を用いない方法についてはコチラで解説しています!)

coconala.com

 

次のステップでいよいよ証明していきましょう。

 

Step3) はさみうちの原理を用いて証明する

最後にStep2)で作った不等式を用いて、はさみうちの原理により実際の極限値と予想値が一致することを証明しましょう。

 

Step2)で求めた不等式

 \left| a_{n} - \alpha \right| <\left| a_1 - \alpha \right| \cdot \bigl( \sqrt{\frac{2}{7}} \bigr)^{n-1} 

の右辺は

 n \to \inftyのとき、 (右辺) \to 0となるので

 (左辺) =  \left| a_{n} - \alpha \right|  \left| a_{n} - \alpha \right| \to 0となります。

(*左辺は絶対値に囲まれているので、0以上であることは保証されているから)

 

従って、 a_n \to \alpha = \cfrac{1}{2}と、最初に求めた予想値に収束することを示すことができましたね!

 

まとめ

  • 漸化式が与えられるタイプの数列の極限の問題は、漸化式を解くことができるかどうかで解法が変わる
  • 漸化式が解ける場合は、一般項を求めてから極限を考える
  • 漸化式が解けない場合は、極限値を予想して、はさみうちの原理と平均値の定理を用いてその値に収束することを証明する

 

 

 

 

 

 

【受験数学】確率漸化式の解き方を徹底解説!!【確率】(例題つき)

 今回は大学入試の数学でも頻出分野である確率漸化式の解き方について解説していきます。

まず、確率漸化式の問題の例題を挙げておきます。

 

(例題)
サイコロを n回振り、 1が出た回数を X_nとする。
このとき X_nが奇数である確率 p_nを求めよ。
 

このような確率漸化式の問題に苦手意識を持っており、教科書や参考書の説明を読んでもいまいち理解できない、という学生は少なくないと思います。

 

そんな確率漸化式ですが、実はその解き方はほとんど決まり切っており、定番の解法を知っているだけでほとんどの問題を解くことができるようになります!

 

ここではまず、主な解法を4種類紹介した後、その中でも最もよく使う解法1つについて詳しく解説して行きます!

 

目次



 

確率漸化式の問題を解く定番の解法

確率漸化式の問題を解く方法としては、主に4種類の解法が存在します。

それら4種類の解法を下に挙げておきます。

  1. 状態遷移図を用いる解法
  2. 集合の考え方を用いる解法
  3. 再帰構造に注目する解法
  4. 座標平面に軌道を描く解法

 

実はこれらの解法の中には漸化式を立てずに直接確率を求める解法も存在しますが、ここではその説明は割愛しておきます。

 

これら4種類の解法の中でも最も幅広い問題に適用することができるのは1.の状態遷移図を用いる解法です。

この状態遷移図を用いる解法さえ知っておけば、確率漸化式のほとんどの問題を解くことができると言っても過言ではないでしょう。

 

そこで、ここからはこの状態遷移図を用いる解法に焦点を当てて、上で書いた例題を用いながら解説していきます。

 

状態遷移図を用いた解法

状態遷移図を用いた解法は、4つの手順を踏むことで確率を求めることができます。

そしてその手順自体はどのような問題であったとしても共通です。

従ってこの4つの手順をしっかりと覚え、数問の練習問題で使い方を練習すれば、誰でも確率漸化式の問題を解くことができるようになります。

 

4つの手順は以下です。

  • Step1) 取り得る“状態”を全て列挙する
  • Step2) 状態間の遷移を図で表現する(これを状態遷移図と呼ぶ)
  • Step3) 状態遷移図から、漸化式を立てる
  • Step4) 漸化式を解き、一般項を求める

 

一つひとつ見ていきましょう!

 

Step1) 取り得る“状態”を全て列挙する

このステップでは、問題で注目しているもの(何かの数だったり移動する点)の状態を全て列挙します。

抽象的な説明をしてもわかりにくいので、具体例で考えましょう。

 

上の例題では、注目しているのはサイコロを n回降って 1の目が出た回数 X_nであり、観点としては X_nが奇数かどうかということになります。

つまり、この例題では取り得る状態とは

  •  X_nが奇数である状態
  •  X_nが偶数である状態

の2つになります。

このように問題文で注目しているものは何か、さらにどのような観点で注目しているのか、を頼りに全ての状態を列挙しましょう。

 

Step2) 状態間の遷移を図で表現する(これを状態遷移図と呼ぶ)

次に、Step1)で列挙した状態間がどのように遷移する、つまり移り変わるかということを考えます。

上の例題ではサイコロを振って 1の目が出た回数が、次に出たサイコロの目によってどのように奇数と偶数の状態を遷移するか、ということを考えれば良いのです!

 

その遷移の様子を、遷移する確率とともに図で表したものが下図です。

そしてこれが「状態遷移図」と呼ばれるものです。

 

f:id:hmorinari:20190108203339p:plain

1の目が出た回数についての状態遷移図

 

Step3) 状態遷移図から、漸化式を立てる

次に、Step2)で作った状態遷移図をもとに、求めたい確率についての漸化式を立てましょう。

求めたい確率は X_nが奇数である確率 p_nです。

上の状態遷移図では左側の状態である確率が p_nになります。

従って全ての状態の確率を足すと 1になることから、右側の状態( X_nが偶数)である確率は 1 - p_nとなります。

(*状態は全て列挙しているということは、注目しているものは任意の nについていずれかの状態にあります。このことから、全ての状態の確率を足すと 1になるのです)

 

よって、 p_nについての漸化式は

 p_{n+1} = \cfrac{5}{6} p_n + \cfrac{1}{6} (1 - p_n) \\ \quad \quad = \cfrac{2}{3} p_n + \cfrac{1}{6}

と立式することができます。

また、 p_nの初項は一度サイコロを振って、 1の目が出るかどうかなので( 1の目が出た回数が奇数かどうかなので、一度しかサイコロを降らない場合はその目が 1かどうかと考えれば良いです)

 p_1 = \cfrac{1}{6}

と求められます。

 

Step4) 漸化式を解き、一般項を求める

あとはStep3)で求めた漸化式を解くだけです!

この漸化式は特性方程式を用いる形です。

特性方程式を立てて、解を求めておきます。

 \alpha = \cfrac{2}{3} \alpha + \cfrac{1}{6} \\ \quad \Leftrightarrow \alpha = \cfrac{1}{2}

 

従って、漸化式は以下のように変形することができます。

 p_{n+1} - \cfrac{1}{2} = \cfrac{2}{3} \biggl( p_n - \cfrac{1}{2} \biggr)

これを p_1 = \cfrac{1}{6}のもとで解くと

 p_n - \cfrac{1}{2} = \biggl( \cfrac{1}{6} - \cfrac{1}{2} \biggr) \cdot \biggl( \cfrac{2}{3} \biggr)^{n-1} \\ \quad \Leftrightarrow p_n = \cfrac{1}{2} - \cfrac{1}{3} \biggl( \cfrac{2}{3} \biggr)^{n-1}

と求まりました。

これが答えになります。

 

このStep4)で躓いた方は確率ではなく数列(漸化式)の分野を復習しおきましょう!

 

まとめ

  • 確率漸化式の問題を解く定番の方法は4つある
  • その中でも状態遷移図を用いる解法が最も汎用的
  • 状態遷移図を用いる解法では4つの手順を踏むだけで確率を求めることができる
  • 練習が必要なのは特にStep1)である

 

また、今回の例題では状態が2つだけであるような問題設定でしたが、3つ以上の状態が考えられるような問題が出題されることもあります。

 

 

 

【過去問解説】日本大学医学部の数学を徹底解説【私立医学部】

今回は日本大学医学部の数学を解説しようと思います!

 

大学受験の数学の問題には一般的に様々な解法が存在します。

そしてそれらの解法には各々特徴があります。その特徴を大別すると次の二種類に分けられます!

  1. 計算は簡易だが、思いつきにくかったり、他の問題に応用しにくい解法
  2. 計算は多少面倒だが、様々な問題に応用できる汎用的な解法

私は個人的には2.のような解法をお勧めします。

1.のような解法は計算が楽なので魅力的に見えますが、非常にたくさんの解法を覚える必要があったり、試験本番ではその場で思いつきにくかったりします

2.のような解法は一度しっかりと覚えてしまえば様々な問題に応用することができ、本番の試験でも使える可能性が高いからです。

受験の勉強で大切なのは、ある問題に特化した解法を学ぶのではなく、いかに本番の問題でも使うことができる武器を増やすかということです!

 

今回は2016年、2017年、2018年の過去問からいくつかピックアップし、汎用的な解法を紹介してきたいと思います!

 

 

2016年[2](2)三角関数

この問題はy = 3\sin^2{\theta} - 5 \cos{\theta}\sin{\theta} - 2\cos^2{\theta}という関数の最大値と最小値を求めよ、という問題です。

このように全ての項が三角関数の二次式であるものは、「倍角の公式を用いて次数下げを行う」という解法が鉄板です!

 

まずは倍角の公式を用いて次数下げを行うとはどういうことかの解説をしておきます!

倍角の公式は以下です。

 \sin{2\theta} = 2\sin{\theta}\cos{\theta}

 \cos{2\theta} = 1 - 2 \sin^2{\theta}\\ \quad \quad \,\,  = 2 \cos^2{\theta} - 1

上の公式の右辺は三角関数の二次式ですが、左辺は一次式です。

つまり、この公式を用いて二次式の項を一次式に変換することができます!これが次数下げです!

 

具体的に計算してみましょう!

倍角の公式から、

 \cos{\theta} \sin{\theta} = \cfrac{\sin{2\theta}}{2}, \quad  \sin^2{\theta} = \cfrac{1 - \cos{2\theta}}{2}, \quad  \cos^2{\theta} = \cfrac{1 + \cos{2\theta}}{2}

であることがわかるので、これをもとに次数下げを行うと、

 y = 3\sin^2{\theta} - 5 \cos{\theta}\sin{\theta} - 2\cos^2{\theta} \\ \quad  = 3 \cdot \cfrac{1 - \cos{2\theta}}{2} -5 \cdot \cfrac{\sin{2\theta}}{2} - 2 \cdot \cfrac{1 + \cos{2\theta}}{2} \\ \quad = - \cfrac{5}{2} (\sin{2\theta} + \cos{2\theta}) + \cfrac{1}{2}

と式変形することができますね!

ここまで変形できてしまえば、この関数の最大値と最小値を求めることはそこまで難しく感じないのではないでしょうか?

あとは \sin{2\theta} + \cos{2\theta}の部分を三角関数の合成の公式を用いてまとめてしまえばOKです!

 

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2017年[1](1)解と係数の関係

この問題は二次方程式の二つの解を \alpha, \,\,\,\, \betaとしたときに \alpha^2 + \beta^2 \alpha^3 + \beta^3の値を求めよ、という問題です。

こうした解と係数の問題は定番の問題であり、どの大学でも頻出となっています。

こうした問題においても次数に注目することが非常に重要です!

まず、元の二次方程式に解と係数の関係を用いて

 \alpha + \beta = - \cfrac{5}{3} \\ \alpha \beta = \cfrac{8}{3}

 であることがわかっています。

従って、

 \alpha^2 + \beta^2 = (\alpha + \beta)^2 - 2 \alpha \beta \\ \quad \quad \quad = \biggl(-\cfrac{5}{3}\biggr)^2 - 2 \cdot \cfrac{8}{3} \\ \quad \quad \quad = - \cfrac{23}{9}

 と計算されます。

ここまではいいですね!

 

次に \alpha^3 + \beta^3についてはどのように計算すれば良いでしょうか?

3次式を作り出したいので (\alpha + \beta)^3として、余分な項を引き算する、というのがまずは思いつくのではないでしょうか。

この方法でももちろん解くことができますが、例えば問題で問われているのが \alpha^7 + \beta^7などであれば同じように (\alpha + \beta)^7を計算するでしょうか。これは現実的ではありませんね。

そこで重要なのが次数に注目することです!

 

今求めたい \alpha^3 + \beta^3は3次式です。

 (\alpha + \beta)^3とするのは1次式を3乗することで3次式を作るのも一つの方法ですが、他にも2次式と1次式を掛け合わせることで3次式を作るという方法もあります!

つまり (\alpha^2 + \beta^2) (\alpha + \beta)として、余分な項を引き算すれば良いということです!

この問題では高々3次式なのでそこまでありがたみを感じないかもしれませんが、7次式などではどうでしょうか?(実際にどこの大学かは忘れましたが出題されていたように思います)

 (\alpha^3 + \beta^3) (\alpha^4 + \beta^4)を計算した方がずっと楽ですね!

 \alpha^4 + \beta^4を求めるためにはどうすれば良いかと思う人もいるかもしれませんが、これも4次式なので (\alpha^3 + \beta^3) (\alpha + \beta)というように3次式と1次式を掛け合わせるか、あるいは (\alpha^2 + \beta^2)^2というように2次式を2乗することで求めることができます!

これも (\alpha + \beta)^4とするよりもずっと楽です!

 

以上のことから、 \alpha^3 + \beta^3について

 \alpha^3 + \beta^3 = (\alpha^2 + \beta^2) (\alpha + \beta) - \alpha \beta (\alpha + \beta) \\ \quad \quad \quad = \cfrac{5}{3} \biggl( - \cfrac{23}{9} \biggr) - \cfrac{8}{3} \biggl( -\cfrac{5}{3} \biggr) \\ \quad \quad \quad = \cfrac{235}{27} 

と計算できるわけです!

 

本問題のより詳細な解説や、2017年の他の問題の解説はコチラ!!

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2018年[1](2)複素数

この問題は

三次方程式  ax^3 + bx^2 + 25x - 8a = 0  が  x = 1 + \sqrt{2} i  を

解に持つときの a, bの値を求めよ、という問題です。

こうした問題においてはまず求めたい未知数の数と、立てられそうな条件式の数を比較することが重要です!

求めたい未知数の数は aとbの2つです。

立てられる条件式については、解 x = 1 + \sqrt{2} iを代入して得られる式1つ、かと思うかもしれませんが、これは複素数解なので、実数部分と虚数部分に注目することで2つの式を立てることができます!

これで未知数の数と条件式の数が揃っているので計算さえすれば解けるということがわかりました!

(この考察を怠ってしまうと、 x = 1 + \sqrt{2} iが解なので共役な複素数である x = 1 - \sqrt{2} iも解であるという事実を使って、他の条件式を立てるということをしてしまうかもしれませんが、そうした無駄な計算を避けることができます!

また、未知数の数がもう少し多くなった場合に、何をすれば良いかわからなくなってしまう、ということも避けられます!例えば条件式が足りていないのであれば使っていない条件はないかと考えることができますし、条件式は足りているのであればどう計算すれば良いかを考えればいいのです!)

 

ということで大きな方針は立ちました!

 x = 1 + \sqrt{2} iを元の方程式に代入して実数部分と虚数部分でそれぞれ条件式を立て、連立して aとbを求めればOKです!

そして実はここからが複素数の問題で重要なことです!

この x = 1 + \sqrt{2} iという解をそのまま方程式に代入しても良いのですが、その場合 (1 + \sqrt{2} i)^3といった多少面倒な計算をする必要があります。

また、他の問題と同じ話になりますが、これがもっと高次の式だった場合、どんどん計算が大変になり計算ミスの危険性も増していきます。

そこで重要になってくるのがまたも次数下げです!

 

では、 x = 1 + \sqrt{2} iという式を使ってどのように次数下げを行うかということを解説していきます!

次数下げの基本的な発想は2次式と1次式を同一の式の中に登場させるということです。しかし、上式ではまだ2次式が登場していないため、両辺を二乗するなどして2次式を登場させる必要があります。

また、このときできれば虚数 iは消えて欲しいので、 x - 1 = \sqrt{2} iという形に変形してから両辺を2乗します!

すると

 (x - 1)^2 = (\sqrt{2} i)^2 \\ \quad \Leftrightarrow x^2 - 2x + 1 = -2 \\ \quad \Leftrightarrow x^2 = 2x - 3

となり、 (2次式) = (1次式)の式が導き出されました! 

これで次数下げを行うことができます!

上の式変形のポイントは「虚数 iだけ右辺に残して両辺を2乗する」ということです!

 

2次式が1次式に次数下げできるので、これで何次式であっても同様に1次式まで下げることができます!

例えば3次式であれば

 x^3 = x \cdot x^2 \\ \quad = x \cdot (2x - 3) \\ \quad = 2 x^2 - 3x \\ \quad = 2(2x - 3) - 3x \\ \quad = 4x - 6 - 3x \\ \quad = x - 6

という次数下げを行うことができます!

同様の操作を繰り返すことで、何次式であっても1次式まで次数を下げられるということがわかりますね!

 

これにより元の式を次数下げすると、

 (左辺) = ax^3 + bx^2 + 25x - 8a \\ \quad = a (x - 6) + b (2x - 3) + 25 x - 8a \\ \quad = (a + 2b + 25) x - (14a + 3b)

と、1次式まで下げることができました!

あとはこれに、 x = 1 + \sqrt{2} i を代入して実数部分、虚数部分それぞれを  = 0 とすれば良いのです!

 

本問題のより詳細な解説や、2018年の他の問題の解説はコチラ!!

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→こちらは現在受け付けておりません。申し訳ございません。